高齢者を元気にする「アニマルセラピー」
アニマルセラピーとは?
高齢者への介入の一つに、動物を使った「アニマルセラピー」という方法があります。介護施設で行われているさまざまなレクリエーションに犬などの動物が参加するもので、「動物介在活動」とも呼ばれ現在注目されています。動物介在活動は、治療的な効果を狙って行う「動物介在療法」とは異なるものです。使用される動物の種類は、犬をはじめとしてウサギやイルカなどで、障がい者に対しては馬も使用されます。介護施設の多くは、アニマルセラピー活動を行っているNPO団体などを利用しています。繰り返し利用する介護施設もあり、動物と再会することを楽しみにしている高齢者も少なくありません。
アニマルセラピーの効果
アニマルセラピーの効果はいくつかあります。認知症高齢者は普段、刺激の少ない生活を送っています。動物と触れ合うことで感情が刺激され、自律神経のバランスがよくなると考えられています。また高齢者にはさまざまな不安があります。人との交流が少なくなり社会性が失われる、加齢によって機能が衰え以前できていたことができなくなるなどの不安が軽減される効果があります。
また、集団の中に動物がいることで、まわりの人との会話もはずみやすくなります。さらに、動物と触れ合うことで体を動かすようになり、ADL(日常生活動作)の維持に役立ちます。普段はベッドで横になっていることが多くても、動物が来ただけで起き上がる人もいます。動物との交流は単に触れるだけではありません。犬であれば、餌を与えるなど世話することも含まれていて、それによって高齢者も犬も喜び、感情の交流が生まれます。
発展途上のアニマルセラピー
アニマルセラピーはまだ事例が少なく、効果が実証されているわけではありません。看護の場面や介護施設にアニマルセラピーを活用してもらうためには、効果を実証する必要があります。現在はアニマルセラピーの前後の自律神経の変化を計測したり、筋力変化を計測したり、日常生活の様子を観察するなどのデータの蓄積が行われているところです。
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先生情報 / 大学情報
県立広島大学 保健福祉学部 保健福祉学科 看護学コース 教授 山中 道代 先生
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