筋肉が緩むとき、神経は興奮している? 中枢神経と運動の関係

筋肉が緩むとき、神経は興奮している? 中枢神経と運動の関係

運動と中枢神経

今までできなかった運動を身につける過程で、身体の中ではどのような現象が起きているのでしょうか。人間がスポーツまたは単純な運動をするとき、脳や脊髄にある中枢神経が1000分の1秒単位で活動し、身体の動きを適切に調整していることがわかっています。中枢神経を構成する神経細胞がどう動いて運動学習に関わっているのか、具体的なメカニズムを解明しようと研究が始まりました。

中枢神経疾患のリハビリに貢献

運動が上達していくときの中枢神経の使い方が解明されれば、体育の指導だけでなく、脳卒中やパーキンソン病をはじめとする中枢神経疾患に苦しむ患者を救えるかもしれません。神経細胞は一度損傷するともとに戻らないため、残っているほかの神経細胞が代わりに運動を担います。その結果、歩行はできるものの足を引きずってしまう、といった症状が出る人も多いです。また、自分では力を入れていないつもりでも、勝手に筋肉に力が入ってしまい、身体がこわばってしまう人もいます。筋肉に力が入りすぎていると、運動を瞬時に切り替えられずに身体を動かしにくくなるのです。歩行を上達させるなど、新たな運動を覚えるためには、まず神経にうまく働きかけて筋肉の緊張をほぐすことが重要だといえます。

力を抜くとき神経が興奮する?

中枢神経が正常な人は、「力を抜いてください」と言われた数十ミリ秒後に脳が筋肉に送る電気信号を遮断し、筋肉を緩ませることがわかっています。しかし脳卒中のように神経細胞の一部が損傷してしまうと、脳から筋肉にその遮断命令を伝えることが難しくなります。「脳から電気信号を遮断する」という通常の方法以外にも筋肉を緩ませる方法がわかればと、中枢神経や筋肉の動きが分析された結果、力を抜く動作の直前に脳内で神経細胞の興奮が高まることがわかってきました。なんらかの方法で神経細胞を興奮させられれば、筋肉を緩ませる、という運動が上達するかもしれません。適切な刺激を与える方法を探ろうと、研究が続いています。

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神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部 リハビリテーション学科 理学療法学専攻 教授 菅原 憲一 先生

神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部 リハビリテーション学科 理学療法学専攻 教授 菅原 憲一 先生

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基礎理学療法学、リハビリテーション学

メッセージ

「最初から正解にたどり着きたい」、「できることなら間違えたくない」、と思っているかもしれません。しかし何にせよ成長のためにはトライアンドエラーは大切です。新しい運動を修得するための運動学習でも、エラーをみつけることが上達の鍵だといわれています。エラーがわかっていれば、次に何に取り組めば動きがよりよくなるのか、練習内容を考えやすくなるでしょう。しかしエラーを得るためにはトライする必要があります。間違いがあっても直せばいい、と気楽に構えて、高校生のうちからどんどん挑戦する習慣をつけてほしいです。

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神奈川県立保健福祉大学では「ヒューマンサービス」を使命とし、人材育成、教育・研究活動、地域貢献活動を行っています。
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