東日本大震災被災地への応援派遣からみる公務員の役割
被災地へ公務員を派遣するってどういうこと?
2011年3月の東日本大震災では甚大な被害を受けました。自治体の行政機能も例外ではありませんでした。陸前高田市(りくぜんたかたし)や大槌町(おおつちちょう)のように庁舎を津波で失う自治体もありました。現在、多くの被災地では復興に向けた事業を進めています。復興過程での問題の一つに、行政職員の不足があります。では、職員不足に悩む被災地ではどうしているのでしょう。
公務員の被災地応援派遣における問題点
現在、行政サービスが滞りなく行えるように、日本各地の自治体から公務員の応援派遣が行われています。被災地応援派遣の状況は、例えば、中長期的な職員派遣制度での要望と充足状況を見てみると(2014年2月1日現在)、岩手、宮城、福島の各県内の48市町村が1448人名の応援要請をしています。一方で、充足数は1288人です。つまり、159人の不足が出ています。特に復興に直結する土木職や、被災者の心を癒す心理職などでの不足が目立ちます。しかし、これらの職種は日本各地の自治体でも人材不足で、被災地に派遣する余裕がないのが現状です。
公務員の果たす大切な機能
地方公務員は一度採用された自治体だけで終身勤務し続けるイメージがあります。そのため、被災地の公務員派遣は、本来の自治体での仕事とは異なる役割に見えます。しかし、そうでしょうか。地方公務員法には「すべて職員は、全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し、かつ、職務の遂行に当たっては、全力を挙げてこれに専念しなければならない」とあります。
震災のような非常事態では、「全体のための奉仕」として自らの個別自治体での全体のためだけでなく、自治体全体のために、自治体間で職員を派遣し応援するという実践が生まれてきました。被災地への公務員派遣からは、一つの自治体だけではない、自治体全体への奉仕が求められる仕事である、という問いかけがあります。
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