移民国家アメリカの歴史が教えてくれること
世界一、移民を受け入れてきたアメリカ
アメリカ合衆国は、独立宣言で「全ての人間は平等に作られている」との理念を掲げ、世界でもっとも多くの移民を受け入れてきた国として知られています。これまでに受け入れた7000万人以上の移民の中には、明治・大正時代に渡米した日本人も含まれています。
この多様な人種・民族を抱えるアメリカの政治課題は、昔も今も、いかにして社会を統合するかでした。移民に対する排斥運動や差別が繰り返され、もともと奴隷として連れてこられた黒人に対する差別は、南北戦争後の奴隷解放によって解消するどころか、その後ますます激しくなり、21世紀の現在も根深く差別問題が残されています。2020年には、反人種差別を訴えた「BLACK LIVES MATTER運動」が再び隆盛となり、そのことは日本でも大きく報じられました。
奴隷解放は失敗だったのか
今も残る構造的な人種差別はどこに起源があるのか。近年の研究では、最初の黒人が北米英領植民地にやってきた1619年を起点に黒人奴隷制の歴史を振り返り、リンカン大統領による奴隷解放宣言の後に制定された憲法修正13条に問題があったとの指摘もあります。囚人として無償労働を課せられることは、19世紀後半から今日までずっと続いているのです。
移民に見る、人種・ジェンダー・エスニシティ
移民の歴史は、人種やジェンダー、エスニシティ(民族集団)の問題と切り離せません。移民はまず独身の若い男性が移住し、その男性たちが移民先で成功してから家族形成のために女性移民が増えていきました。例えば日本人移民だと、写真花嫁というかたちで女性たちが海を渡りました。こうした移住のパターンから、ジェンダー問題を読み解くこともできます。
多人種・多民族が混在するアメリカは、差別問題が顕著に見られる一方、多様性(ダイバーシティ)においては世界の最先端を行く国でもあります。移民の国アメリカの歴史を知ることは、これからの理想的な社会のあり方を探り、その解決方法を学ぶことにつながっているのです。
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先生情報 / 大学情報
一橋大学 社会学部 社会学科 教授 貴堂 嘉之 先生
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