マスキングテープが文房具に 消費者が創造する独自の価値
マスキングテープはなぜ文房具になった?
文房具として使われているマスキングテープの原型は、職人が工芸品や建物などを塗装するときに使う養生用テープです。しかし消費者の一部が「色がかわいい」、「質感がいい」と注目し、文房具として使い始めました。さらにその消費者たちはマスキングテープの製造会社に「こんなデザインがほしい」と要望を送ります。企業側が予想もしていなかった用途やニーズでしたが、消費者の提案を聞き入れてデザインにこだわったマスキングテープを製造した結果、売上を伸ばしました。やがてほかの企業も追随し、市場全体が成長していったのです。
消費場面に注目したマーケティング
マスキングテープのように、企業が思いもしなかった商品の価値を消費者が見いだし、市場が活性化する事例が増えています。企業の視点から価値を込めて世に送り出した商品やサービスを活用して、消費者自身で独自の価値を創造しているのです。そのためマーケティングの分野でも、消費者が価値を見いだすプロセスや、その価値を高めるために企業ができることに注目した研究が行われています。
水族館に訪れる価値
消費者がどのような価値を生み出しているのかを深く知るには、消費者に対するインタビュー調査が有効です。例えば岩手県のある水族館で、来館者が感じている価値が調査されました。すると、水族館側が想定している「生き物を見る」という価値だけでなく、「子どもの成長を実感できる」という回答が見られました。特に小さな子どもがいる保護者は何度も同じ水族館に訪れており、生き物に対する子どもの反応の変化から成長を感じていると考えられます。
「子どもの成長を実感する」という価値を来館者が生み出すことに、水族館スタッフはどのように寄り添って新たなサービスを提案していくのか、さらに価値を感じやすくするためには何ができるのかを明らかにしようと、分析が始まりました。こうした研究の進展により、消費者が新たな価値を生み出しやすい商品やサービスを開発する方法もわかるかもしれません。
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先生情報 / 大学情報
岩手県立大学 総合政策学部 総合政策学科 経済・経営コース 准教授 三好 純矢 先生
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