講義No.13334 経営学・商学

マスキングテープが文房具に 消費者が創造する独自の価値

マスキングテープが文房具に 消費者が創造する独自の価値

マスキングテープはなぜ文房具になった?

文房具として使われているマスキングテープの原型は、職人が工芸品や建物などを塗装するときに使う養生用テープです。しかし消費者の一部が「色がかわいい」、「質感がいい」と注目し、文房具として使い始めました。さらにその消費者たちはマスキングテープの製造会社に「こんなデザインがほしい」と要望を送ります。企業側が予想もしていなかった用途やニーズでしたが、消費者の提案を聞き入れてデザインにこだわったマスキングテープを製造した結果、売上を伸ばしました。やがてほかの企業も追随し、市場全体が成長していったのです。

消費場面に注目したマーケティング

マスキングテープのように、企業が思いもしなかった商品の価値を消費者が見いだし、市場が活性化する事例が増えています。企業の視点から価値を込めて世に送り出した商品やサービスを活用して、消費者自身で独自の価値を創造しているのです。そのためマーケティングの分野でも、消費者が価値を見いだすプロセスや、その価値を高めるために企業ができることに注目した研究が行われています。

水族館に訪れる価値

消費者がどのような価値を生み出しているのかを深く知るには、消費者に対するインタビュー調査が有効です。例えば岩手県のある水族館で、来館者が感じている価値が調査されました。すると、水族館側が想定している「生き物を見る」という価値だけでなく、「子どもの成長を実感できる」という回答が見られました。特に小さな子どもがいる保護者は何度も同じ水族館に訪れており、生き物に対する子どもの反応の変化から成長を感じていると考えられます。
「子どもの成長を実感する」という価値を来館者が生み出すことに、水族館スタッフはどのように寄り添って新たなサービスを提案していくのか、さらに価値を感じやすくするためには何ができるのかを明らかにしようと、分析が始まりました。こうした研究の進展により、消費者が新たな価値を生み出しやすい商品やサービスを開発する方法もわかるかもしれません。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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岩手県立大学 総合政策学部 総合政策学科 経済・経営コース 准教授 三好 純矢 先生

岩手県立大学 総合政策学部 総合政策学科 経済・経営コース 准教授 三好 純矢 先生

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マーケティング論

先生が目指すSDGs

メッセージ

マーケティング論は主に企業と消費者との関係を追及する学問といえます。あたなも消費者の一人であり、実は非常に身近な分野なのです。「なぜその商品を購入したのか」、「使用してみてどうだったのか」など、日々の買い物やサービス体験などに注目してみてください。また、SNSを活用する中でも、知らず知らずのうちに企業広告を多く目にしているのではないでしょうか。人々は企業のマーケティング活動の影響を受けながら生活しているのです。また、マーケティング活動の主体は企業だけでなく、行政や地域などにも応用できます。

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大学は「知識」を得る場であるだけではなく、「人生の目的」を考える場であり、これからの人生で自分は何をなすべきかを探求する場でもあります。人はそれぞれ固有の素質と能力を持っています。それをいかに見出し、育成していくかが教育の最大課題であると考えています。この大学での貴重な学習期間に、自己の能力と個性を伸ばし、適性を見出すことに努めてください。本学の教職員は、全力を挙げてこれに協力します。