住みやすい街を作るための、組織やルール
「住みやすい街」の背景にあるもの
「いい街」「住みやすい街」「活力のある街」などと言ったときに思い浮かべるものとしては、「緑が多い」「繁華街に近い」「安全、安心」といった条件が挙げられるでしょう。そうした環境をどう作っていくのかを研究するのが、都市政策あるいは「都市のガバナンス」と呼ばれる学問領域です。よりよい環境を作っていくためには、一定のルールや組織といったものが必要となります。例えば、「緑が多い」という環境の背景には、「節度ある開発」という考え方に基づく法的な規制があります。「安全、安心な街」という環境の背景には、見回りや取り締まりなどを行う組織の存在があります。
互いに役割を引き受け合う
それらのルールや組織は、それぞれが単体で存在しているわけではありません。互いに役割を分担し、引き受け合っているのです。街を動かすための組織というと、まずは自治体における意思決定を行う市町村長や市町村議会、その下で活動する公務員組織の存在が大きいですが、そこにNPOや企業といったほかの組織の協力がなければ、都市政策は成り立ちません。さらに近年では、政策の決定に住民の意見を反映したり、行政の動きを住民が評価したりする仕組みも求められるようになってきました。住民による「事業仕分け」のような手法は、何年も前から多くの自治体で実行されています。
「普通の」人を集めて討論する意味
2011年に東京都新宿区で実行された例としては、住民基本台帳をもとに無作為に選んだ住民を集め、事業に関する審議が討議会方式で行われました。市民参加型の討議はこれまでも行われてきましたが、それは自ら手を挙げて積極的に参加してきた住民によるものであり、そこには積極的でない多くの住民の声が反映されていないという欠点がありました。行政にあまり興味のなかったいわゆる「普通の」人たちを集めることで、より公平に住民の声が聞けるというメリットがあるのです。
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先生情報 / 大学情報
東京都立大学 都市環境学部 都市政策科学科 准教授 長野 基 先生
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