講義No.10461 法学

国の「トリセツ」憲法を通して考える男女格差と性的マイノリティ問題

国の「トリセツ」憲法を通して考える男女格差と性的マイノリティ問題

結婚を巡る不平等

誰かと結婚したいと思ったとき、男性は18歳以上、女性は16歳以上なら民法で認められます。この年齢差は「夫は社会に出て働き、妻は家の中で育児や家事を担う」という日本の伝統的な価値観からきています。女性の社会進出が進んだ現代に合っているとはいえず、2022年からは男女とも18歳以上と、性別による違いが廃止されることになりました。一方、夫婦が同じ姓を名乗る夫婦同氏制度が改正される予定はまだありません。本来は夫婦どちらかの氏を選択できるのですが、「妻が夫の家に嫁ぐ」という価値観の残る日本では、98%の夫婦が夫の姓を名乗ります。実質は女性が自らの姓を捨てざるを得ないのが現実なのです。

性的マイノリティの問題

男女間の格差是正だけでなく、性的マイノリティの人々の人権も現代的な問題です。同性同士の結婚を認める国は現在世界に約30カ国ありますが、日本ではまだ認められていません。また、身体上の性と自分が認める性が異なるトランスジェンダーの人は、より過酷な状況に置かれています。現行の法律でも戸籍上の性別を変えることはできますが、性別適合手術をすることが条件です。トランスジェンダーの人の中には健康上の理由や信条から手術ができない、したくない人もいます。彼らに手術を強制させるような現在の法律は正しいといえるでしょうか。

憲法は国の「トリセツ」

1947(昭和22)年に施行された日本国憲法には、日本に暮らすどんなに人にも基本的人権が与えられ、また平等に生きていく権利があることが書かれています。憲法とは国の最高法規であり、法律や条例といったあらゆる決まりも憲法のもとで決められています。つまり憲法とは国の取扱説明書のようなものです。日本の社会は憲法がつくられた当時と比べ大きな変化を遂げています。そうした中でも、すべての国民の自由や平等が守られているのかを検証していくことは、憲法学の大きなテーマなのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

県立広島大学 大学教育実践センター  教授 岡田 高嘉 先生

県立広島大学 大学教育実践センター 教授 岡田 高嘉 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

憲法学、法学、人権論

先生が目指すSDGs

メッセージ

私が専門としている憲法は、大学では国家公務員や教員を志望する学生が履修することが多い科目です。しかし、私はすべての学生に憲法を学んでほしいと思っています。なぜなら憲法とは国の「取扱説明書」であり、国や社会の仕組みを理解するうえで欠かせないものだからです。
高校生のあなたも18歳になると、投票権が与えられ有権者として政治に参加できるようになります。現在の政治的な課題や、どんな政策が必要なのかを自分で考えられるようになるためにも、ぜひ憲法について興味をもち学んでください。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

県立広島大学に関心を持ったあなたは

県立広島大学は、教育、研究、地域貢献、国際交流のいずれにおいても公立大学として一級の大学になっています。「主体的に考え、行動し、地域社会で活躍できる実践力のある人材の育成」を目標に、教養教育では、大学4年間の学士課程教育を通じて実施する「全学共通教育科目」を設定するとともに、専門教育においては、教養教育との連携を図りながら、「専門科目」を系統的に設定することにより、バランスのとれた教育内容を提供していきます。