国の「トリセツ」憲法を通して考える男女格差と性的マイノリティ問題
結婚を巡る不平等
誰かと結婚したいと思ったとき、男性は18歳以上、女性は16歳以上なら民法で認められます。この年齢差は「夫は社会に出て働き、妻は家の中で育児や家事を担う」という日本の伝統的な価値観からきています。女性の社会進出が進んだ現代に合っているとはいえず、2022年からは男女とも18歳以上と、性別による違いが廃止されることになりました。一方、夫婦が同じ姓を名乗る夫婦同氏制度が改正される予定はまだありません。本来は夫婦どちらかの氏を選択できるのですが、「妻が夫の家に嫁ぐ」という価値観の残る日本では、98%の夫婦が夫の姓を名乗ります。実質は女性が自らの姓を捨てざるを得ないのが現実なのです。
性的マイノリティの問題
男女間の格差是正だけでなく、性的マイノリティの人々の人権も現代的な問題です。同性同士の結婚を認める国は現在世界に約30カ国ありますが、日本ではまだ認められていません。また、身体上の性と自分が認める性が異なるトランスジェンダーの人は、より過酷な状況に置かれています。現行の法律でも戸籍上の性別を変えることはできますが、性別適合手術をすることが条件です。トランスジェンダーの人の中には健康上の理由や信条から手術ができない、したくない人もいます。彼らに手術を強制させるような現在の法律は正しいといえるでしょうか。
憲法は国の「トリセツ」
1947(昭和22)年に施行された日本国憲法には、日本に暮らすどんなに人にも基本的人権が与えられ、また平等に生きていく権利があることが書かれています。憲法とは国の最高法規であり、法律や条例といったあらゆる決まりも憲法のもとで決められています。つまり憲法とは国の取扱説明書のようなものです。日本の社会は憲法がつくられた当時と比べ大きな変化を遂げています。そうした中でも、すべての国民の自由や平等が守られているのかを検証していくことは、憲法学の大きなテーマなのです。
参考資料
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県立広島大学 大学教育実践センター 教授 岡田 高嘉 先生
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