ジェンダーと差別について考えるとは?
さまざまな人権とジェンダー
残念なことにどんな国にも、女性に対して、男性に対して、各種マイノリティに対してなど、何かしらの差別があります。実際に起こった差別に対しては法的な対応を取るだけでなく、なぜそのような差別が起きてしまったのか、ジェンダーの視点から考えることも必要です。
例えば「ビジネスと人権」というテーマで考えるとします。ある職種には女性が極端に多く就いています。彼女たちがビジネスの中でどんな待遇を受けているか、男女の格差はないかなどにも目を向けて考えることが、企業にも求められるようになってきています。
ファッションにも多様な問題が絡む
世の中には、ファストファッションが広く流通しています。そのアイテムがどんな国で、どんな人によって作られているかを考えたことはありますか。実際にそれらを製造しているのは、圧倒的に途上国の女性で、その賃金も安く抑えられています。ここには、女性は家庭が第一で、保護者や配偶者に養ってもらっているから安い給料でよいという古い考えが反映されているのです。また、こうした考え方はその国の文化や伝統、経済構造、社会構造などと結びついている場合もあります。
このように問題を分解していくと、ジェンダーとは関係なさそうに思えるところにもジェンダーの影響が入り込んでいる、その事実を指摘する研究も増えてきています。
問題に気づいてもらうための指摘を続ける
ジェンダーは、これまでとは少し違う形で人権問題を考えようとしたときに、キーワードの一つとなるものです。女性に対するあらゆる差別をなくすことを基本理念とした「女性差別撤廃条約」は40年以上前に発効しましたが、いまだに女性差別はなくなっていません。さらにこの条約は性的マイノリティの男性を対象としていないことが、近年問題視されています。これら「今ある」問題の背景にある「なぜ?」について、人権やジェンダーの側面から指摘を続けることで、差別のない世界に近づくことが期待されます。
参考資料
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神奈川大学 法学部 法律学科 教授 近江 美保 先生
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