患者さんの感情や思考を読み取る「心のケア」
体だけでなく心もケア
「コミュニケーション」というと一般的には、社交的にふるまう、挨拶をする、お天気のことを話すなど、人と円滑に接することを真っ先に考えます。一般の人ならばそれでいいですが、医療現場において看護師には、もっと専門的なコミュニケーションスキルが必要です。「何を大切にしているのか」「どう生きたいか」など、看護師は、患者さんの感情や思考を共感的に理解し、体だけでなく、心もケアすることが求められます。
その人の強みに焦点を当てる
「心のケア」は、その人の強みに焦点を当てて患者さんそれぞれの興味・関心を引き出すことが大切です。例えば、コミュニケーションが難しい精神疾患がある場合、対話の中から「おいしいコーヒーを飲みたい」という希望を知り、「喫茶店に行ってみたい」と具体的な方向へ希望を発展させ、「喫茶店に行くためにはどうすればいいか」を一緒に考えて、「では、バスに乗って行こう」と提案します。長い間入院して希望や意欲を失っていた患者さんと根気よく対話することで、閉ざされていた心が外へ向いていく、これが心のケアにつながります。体の病気によって日常生活への意欲が低下してしまった人をケアするメンタルヘルスにおいても大事な視点です。
求められる新たなコミュニケーションスキル
病気の「回復」とは単に元に戻ることを指すのではなく、「成長」や「プラスの変化」とも考えられ、看護師はそれをサポートする立場です。ときには、ケアする立場でありながら「癒やされている」「成長できた」と感じることもあります。個々の努力でコミュニケーションスキルを高めるだけでなく、患者さんと出会ったことで引き出されるスキルもあり、それが医療人としての経験値となります。
新型コロナウイルスの影響でコミュニケーションの手段は大きく変化しました。オンライン診療など、遠隔で患者さんとコミュニケーションを取る場面も増えてくるでしょう。そのときどうやって相手の心に近づくのか、新たなスキルが求められる時代になっています。
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先生情報 / 大学情報
富山県立大学 看護学部 看護学科 講師 杉山 由香里 先生
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