「ハードウェア」と「情報処理」の両方を進化させる
特殊フィルターで20~30の色が見える
SF映画などで、特殊なサングラスをかけると赤外線の軌跡が見えたり、見えない敵を発見できたり、特殊な地形が現れたりと、肉眼では見えない光景が現れるというシーンがあります。このように、物事の違った本質をとらえられるようになると、人の生活は変わります。
例えば、人の眼は赤青緑の3色しか識別できませんが、より多くの色を見ることができれば、把握できる情報も多彩になるということを意味します。特殊な波長フィルターで数十から数百もの色で世界を見る、この技術を「マルチスペクトルイメージング」と呼びます。
光センサで果物の糖度を識別
例えば光センサで選果をする装置は、果物に近赤外線を照射し、果物の内部を透過してきた光を検出することで糖度や酸度などの品質を測定できる仕組みです。このほか、ドローンを飛ばして水田を上空から特殊な光を当てて観測すると、人間の目には全面緑にしか見えない田畑の生育状況がわかります。ほかにも、絵画を撮影すると、同じ色でも違った技法や絵の具で塗られている部分が判明したりします。データを分析することで保存や復元に必要な情報が得られるのです。
これらはいずれも、物に光を当てたとき、特定の波長の光が吸収されるという現象を利用して内部の状態を知る方法で、非破壊検査にも生かされています。
モバイル型で応用範囲を広く
マルチスペクトルイメージングの精度を上げるには、ハードウェアと情報処理の両方を進化させる必要があります。ハードウェアについては、カラーフィルタに人工宝石(フォトニック結晶)を用いる方法があります。情報処理では、撮った画像から機械学習などで目的の情報を可視化することが求められます。SF映画のサングラスのようなモバイル型にするには、計算量が少なくて済むように処理方法を工夫する必要があります。実現すれば、例えば空を見て気温・湿度・水蒸気量から気象予報ができ、ゲリラ豪雨を回避する、といったことも可能になるでしょう。
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富山県立大学 工学部 電気電子工学科 教授 大寺 康夫 先生
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