講義No.10844 看護学

病気があっても生き生きと暮らす 高齢者を支える老年看護

病気があっても生き生きと暮らす 高齢者を支える老年看護

高齢者を尊重し、理解することから始まる

高齢者は60歳代から100歳代と年齢層も幅広く、それぞれ多様な背景や生活史を持っています。そのため、一人一人を尊重し、理解して、その人に応じた看護を行うのが、老年看護です。入院患者の大半は高齢者であり、今後ますますニーズが高まる分野です。高齢者の看護ケアに関しては日本看護協会が認定する「専門看護師」制度などもあります。高齢者への看護にあたっては、まず豊かな経験を持つ高齢者を尊重し、加齢や病気による心身の変化に対応しながら暮らしていることを理解することが大切です。

高齢がん患者のQOLを高める看護

日本ではがん患者が増え、その多くが高齢者です。がんと診断されると、精神的に落ち込んだり、生活に様々な影響を受けながら生きていくことになります。そのため、QOL(クオリティオブライフ)が医学や看護の分野で注目されています。がんや病気になったとしてもQOLを高めることが大切です。例えば、高齢男性に多い前立腺がんですが、治療のため手術を受けた後に、尿失禁を起こし患者のQOLが損なわれる場合があります。その一方で、尿失禁があっても生き生きと暮らししている患者も多くいます。患者の自信が手術後のQOL向上に大きく関わっています。

医療が進歩しても看護は欠かせない

前立腺がん治療では最先端のロボット支援手術が数多く行われています。だからといって必ずしも尿失禁が起こらないわけではないため、看護が必要であることは変わりません。例えば、紙おむつや尿漏れパッドを付けるよう、看護師がアドバイスしますが、デリケートな部分なので、思っていることを言葉にできない患者さんも多くいます。相手の表情やしぐさを見ながら、思いを察し、その人の状態や生活環境などに合わせたふさわしい対処方法を提案します。QOLを尊重し、自信を持って暮らしていけるよう支援することが欠かせません。日々進歩する医療に合わせて看護もアップデートするとともに、医学と患者の隙間を埋めることも、看護の重要な役割なのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

富山県立大学 看護学部 看護学科 講師 川口 寛介 先生

富山県立大学 看護学部 看護学科 講師 川口 寛介 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

看護学、老年看護学

先生が目指すSDGs

メッセージ

看護に対して、大変そうだというイメージがあるかもしれません。実際、大変なこともありますが、看護の楽しさに気づけるかが大切です。
老年看護は比較的新しい分野ですが、高齢化にともない需要が高まっています。看護は大変そうだからと躊躇(ちゅうちょ)している人には、それ以上に楽しいことがあると伝えたいです。患者さんの笑顔を見られ、自分の看護に患者さんが応えてくれます。自分の看護の効果が手に取るようにわかるのです。看護はやりがいがあるし、楽しいものです。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

富山県立大学に関心を持ったあなたは

本学は、1990年の建学以来、創造力と実践力を兼ね備えた人材育成や高度な研究開発、産業界との連携による地域貢献を果たしながら、最適な教育・研究環境を整えてきました。
2024年4月には、「情報」を軸とする工学の専門知識と、データサイエンスの専門知識を兼ね備え、デジタルの力を活用して社会の潜在的課題の解決策を導き出す能力を持った人材を育成する、「情報工学部」を新設しました。新しい校舎も建設予定です。
「ドンドン マスマス」成長する富山県立大学で、一緒に成長しよう!