病気があっても生き生きと暮らす 高齢者を支える老年看護
高齢者を尊重し、理解することから始まる
高齢者は60歳代から100歳代と年齢層も幅広く、それぞれ多様な背景や生活史を持っています。そのため、一人一人を尊重し、理解して、その人に応じた看護を行うのが、老年看護です。入院患者の大半は高齢者であり、今後ますますニーズが高まる分野です。高齢者の看護ケアに関しては日本看護協会が認定する「専門看護師」制度などもあります。高齢者への看護にあたっては、まず豊かな経験を持つ高齢者を尊重し、加齢や病気による心身の変化に対応しながら暮らしていることを理解することが大切です。
高齢がん患者のQOLを高める看護
日本ではがん患者が増え、その多くが高齢者です。がんと診断されると、精神的に落ち込んだり、生活に様々な影響を受けながら生きていくことになります。そのため、QOL(クオリティオブライフ)が医学や看護の分野で注目されています。がんや病気になったとしてもQOLを高めることが大切です。例えば、高齢男性に多い前立腺がんですが、治療のため手術を受けた後に、尿失禁を起こし患者のQOLが損なわれる場合があります。その一方で、尿失禁があっても生き生きと暮らししている患者も多くいます。患者の自信が手術後のQOL向上に大きく関わっています。
医療が進歩しても看護は欠かせない
前立腺がん治療では最先端のロボット支援手術が数多く行われています。だからといって必ずしも尿失禁が起こらないわけではないため、看護が必要であることは変わりません。例えば、紙おむつや尿漏れパッドを付けるよう、看護師がアドバイスしますが、デリケートな部分なので、思っていることを言葉にできない患者さんも多くいます。相手の表情やしぐさを見ながら、思いを察し、その人の状態や生活環境などに合わせたふさわしい対処方法を提案します。QOLを尊重し、自信を持って暮らしていけるよう支援することが欠かせません。日々進歩する医療に合わせて看護もアップデートするとともに、医学と患者の隙間を埋めることも、看護の重要な役割なのです。
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先生情報 / 大学情報
富山県立大学 看護学部 看護学科 講師 川口 寛介 先生
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