心電図に表れる、胎児~幼児期の親子関係
親子の心電図を分析
人の気持ちや関係性の変化などは、数字で測ることが難しい分野です。しかし今、特に親子関係に注目して、感覚ではなく生理学的に互いが愛着を育てていく様子を調査する研究が進められています。そのために活用されているのが「心電図」です。妊娠中の胎児と親、あるいは生後6カ月ほどの子と親の心電図をとって、両者の関係を測り、分析しています。
「何となく」に根拠を
わかってきたこととして、例えば妊娠中であれば、胎児が成長して自律神経が発達してくると、親と胎児の心拍が似た動きをするようになります。また、生後6カ月ほどの乳児の場合、親に対して何かを発信し、親はそれを受けて行動するといった応答関係が結ばれていきます。この双方向のコミュニケーションから相互作用が生じていることが、心電図によって証明されたのです。
これまでは親に対して、「妊娠中はおなかの赤ちゃんに話しかけると良い」など、「何となくそうだろう」という経験知からのアドバイスが行われてきました。ところが今回の研究成果によって、その根拠となるデータを可視化できたため、生理学的に見た関係性がわかるようになりました。良好な親子関係を結んでいくための根拠ある指導を、助産師や保健師などが実践できる可能性が高まってきたのです。
家族のより良い関係性から生まれる幸せ
この研究は引き続き継続されていきますが、今後はもう一つの要素として父親の存在についても調査が行われていく予定です。今、父親による「協力」「お手伝い」ではない、育児への「参加」が進んできています。育児休業取得中や、あるいは普段の生活でどんなふうに過ごすと、親子ともに、あるいは「家族」が幸せを感じられるようになるのかを証明しようとしています。
共働きが一般化してきている現代だからこそ、子育ては両親ともに「自分が積極的に関わるべきこと」ととらえていかなければなりません。その際に必要となる確かな知識が、今後確立されていくはずです。
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関西国際大学 保健医療学部 看護学科 教授 吉沢 豊子 先生
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