AIは人の心に響く俳句を詠めるのか?

AIは人の心に響く俳句を詠めるのか?

フードロスの削減にとどまらない

今やAI(人工知能)を搭載した冷蔵庫では、外出先から中身の確認をできるようになりました。さらに賞味期限の管理や食材を使いきるレシピの提示まで行ってくれます。また、スーパーの場合、AIを利用して商品の売れ行きを見ながらタイムセールを行うこともできます。ほかにも主に労働の場から人を減らす、人手不足を補うといったことを目的にさまざまな分野でAIが使われています。

感覚を情報化するのは難しい

さらに、ロス削減や効率アップといった物質的な面だけではなく、人間が精神的充足を得るための小説や俳句といった創作活動などにもAIが使われ始めています。ディープラーニングの進歩によりAIの語彙力は上がりました。データを基に書ける文章、例えばネット通販の商品説明などは人間と遜色(そんしょく)ないレベルで生成できます。それどころか、「わび・さび」などの多様な文章のテクニックを含む俳句を作ることもできます。しかしAIは表層的な言葉から学ぶことしかできず、場の雰囲気や相手の表情、手触り、においといった人間ならではの感覚をどう情報化するのかが課題です。また、時代を反映した言葉遣いや、俳句の場合はシチュエーションをどう切り取るかなど、情報の取捨選択もなかなか困難です。

人間と異なる美意識を持つ可能性も

最も難しいのは、いかにして読者の感情に訴えかけるかです。というのも人間の感情は極めて抽象的で、「おいしい」「美しい」「面白い」という価値観は客観的に評価しにくいからです。そのため、多くの人間の意識調査を行うことで言葉や文章をカテゴライズしていく必要があります。もちろん価値観には個人差もありますから、オーダーメイドで自分に合った服を仕立ててもらうように、ゆくゆくは個人の細かな好みも反映できるAIが理想です。感情の評価を突き詰めていけばコンピュータ自体も個性を持ち、人間とは異なる、コンピュータならではの美意識を身につけるかもしれません。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

北海道大学 情報科学研究院 情報理工学部門 准教授 山下 倫央 先生

北海道大学 情報科学研究院 情報理工学部門 准教授 山下 倫央 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

知能情報学、情報通信学

先生が目指すSDGs

メッセージ

もはやAI(人工知能)は、特別な技術ではありません。身につけたことはどんどん使ってみてください。
日本人は、「恥ずかしい」「笑われたくない」という思いからチャレンジをためらう傾向があります。しかし、失敗を恐れる必要はありません。さまざまなSNSが身近になった中、失敗も「いい話のネタができた」と前向きにとらえることです。また、誰かに失敗談を話すと何かしらのフィードバックやアドバイスとなって返って来ます。成功につなげるために、それを拒絶せず受け入れられる度量の広さを持ちましょう。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?

北海道大学に関心を持ったあなたは

北海道大学は、学士号を授与する日本最初の大学である札幌農学校として1876年に創設されました。初代教頭のクラーク博士が札幌を去る際に学生に残した、「Boys, be ambitious!」は、日本の若者によく知られた言葉で本学のモットーでもあります。また、140余年の歴史の中で教育研究の理念として、「フロンティア精神」、「国際性の涵養」、「全人教育」、「実学の重視」を掲げ、現在、国際的な教育研究の拠点を目指して教職員・学生が一丸となって努力しています。