これまでの常識を壊し、高齢化した社会をチャンスに変える
その「役割」は「常識」か?
私たちが今、常識として当たり前に受け入れていることは、家族や友人との会話、教育によって習得した考え方にすぎない可能性があります。「男の体に生まれたら男らしく、女の体に生まれたら女らしく生きる」というのも、そのひとつです。介護の現場においても「妻が夫の家族の介護を行う」や「ヘルパーは女性がする仕事」という「常識」があります。しかし働く女性がどんどん増えている現代においてその考えのままでいると、介護を行う人がいなくなり、介護を受ける側にも大きな負担が生じます。
変化しつつある介護の現場
これまでは、高齢者介護といえば同居介護がほとんどでした。しかし、今後は介護のために同居する人は少なくなっていきます。一昔前ならいわゆる「嫁」の立場である女性が義理の両親の介護を行うというのが当たり前でしたが、今では自分の仕事や夫や子どもを優先する人が増えています。夫婦や家族の関係はどんどん変化していき、夫が自分の親の介護を行うために親元に通うというケースも増えています。そうした介護方法の変化は実情に沿ったものですが、「親の介護は妻や嫁がして当然だ」という考えから抜け出せない人にとっては、つらい現実です。ますます高齢化が進む日本において、介護をする方もされる方も犠牲にならない介護のあり方を考えることは、私たちにとって重要な問題です。
高齢化した社会はチャンスでもある
日本は世界一の「高齢国」ですが、高齢者の寿命が伸び、介護の必要な人が増えたのは、人類史上では最近のことです。介護が長期化した現在は、個人の尊厳をできるだけ尊重し、死の間際までケアを尽くすことが求められています。日本は今、歴史上どの国も経験したことがない状況に直面しています。暗い話のように思えますが、日本が介護問題などを解決する仕組みを発見できれば、中国や韓国など同じく高齢化が急速に進む国々のモデルケースにもなります。介護やケアにおいて日本は最先端を走っていて、ある意味新しいビジネスチャンスにも恵まれているのです。
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先生情報 / 大学情報
山口大学 経済学部 経済学科 教授 鍋山 祥子 先生
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