負の遺産を克服しながら国を作る、紛争国のダイナミックな動きを追え
植民地政策が紛争の原因
中東やアフリカでテロや人質殺害といった事件が起こると、多くの人々はアルカイダやIS(イスラーム国)といった過激な組織に対する恐怖を感じます。ところが、このような宗教や民族に起因するようにみえる紛争が起こる背景には、ヨーロッパの国々による植民地政策もあります。イギリスやフランスは植民地統治のなかで、自分たちの都合で現地の少数派を統治機構に組み込んだため、内部に対立が生まれました。また、勝手に国境線を引いたため、国の内外で利害対立が起こり、それも紛争の原因の一つとなったのです。
短期間で国作りを求められる紛争国
中東やアフリカの国々は統治機能が脆弱なため、紛争を収めることができず、テロ組織の介入を許したり、民兵組織や自警団といった自主的な組織が医療、教育、インフラ整備、治安の維持を行ったりするようになりました。当初は現地の人々から歓迎されますが、紛争が収まると、そうした組織は政治活動を行うようになります。さらに、産油国であれば石油の利権を得ようとして、そこからまた利害対立が起こったのです。ヨーロッパの国々は、戦争を繰り返しながらも、何百年もかけて自らの中央集権国家を築いてきました。しかし、中東やアフリカの国々は紛争を防ぐためにも、短期間での国作りを求められており、非常に困難な課題を突きつけられているのです。
実態をどうとらえるか
これらの国々は、植民地時代の負の遺産を克服しながら、国作りをしなければなりません。先進国は、テロを防ぐためにもそれを支援したいと思っていますが、介入すると対立を拡大させる可能性があり、両者はディレンマに満ちています。
中東やアフリカの研究は、これまで紛争の原因や被害の実態、解決のための政策論が主要テーマでした。しかし、それだけでは実態をとらえることができません。研究では植民地時代の負の遺産を克服しつつ国作りをし、かつ紛争にも対応している中東諸国のダイナミックな動きをとらえること、そして紛争がその後、国家や社会にどのような影響を与えているのかという点の解明が求められているのです。
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先生情報 / 大学情報
九州大学 共創学部 共創学科 准教授 山尾 大 先生
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