アメリカ政治に欠かせない「シンクタンク」とは?
アメリカ政治を支えるシンクタンク
アメリカは「シンクタンク超大国」です。シンクタンクとは政策研究に特化した非営利の研究機関のことであり、特に新政権が発足した時に大きな存在感を発揮します。官僚制における政治任用制のもとで、アメリカの大統領は政府高官に政治家や企業経営者ら外部の人材を積極的に起用しますが、政策への深い知識を有しているシンクタンク研究員も候補となります。バイデン政権との関係でも多くのシンクタンク関係者が政府高官に起用されています。
一方、政権が交代すると前の大統領によって任命された人々は基本的に退職しますが、シンクタンクはそのような退職した元官僚の受け皿としても機能しており、首都ワシントンで政策研究を続け再度の政権入りをめざす人々のための再就職先ともなっています。
立法府とシンクタンクの関係
行政府だけでなく、立法府との関係においてもシンクタンクは重要です。アメリカの政党は党内規律が弱く、新人議員であっても党の方針に縛られずに自由に法案を提出することができます。そのため、議員は自らのスタッフだけでなく、シンクタンクなどに所属する外部専門家にも積極的に助言を求める傾向があります。
党派対立とシンクタンクの発達
アメリカでシンクタンクが数多く存在する要因としては、上記の政治任用制などの制度的要因や資金源の充実といった財政的要因が挙げられますが、その他に政治的要因も重要です。1970年代以降の党派対立の激化がシンクタンクの拡大をもたらし、共和党に近い保守派や民主党に近いリベラル派がそれぞれ自らのシンクタンク整備に力を入れました。そして、保守派のシンクタンクはレーガン、ブッシュ両共和党政権との関係で、リベラル派のシンクタンクはオバマ民主党政権との関係で非常に大きな影響力を発揮しました。
一方で、こうしたイデオロギー色が強いシンクタンクについては政策論議における妥協を困難にしている側面もあり、党派対立をさらに激化させる要因の一つとなっていることも忘れてはなりません。
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先生情報 / 大学情報
帝京大学 法学部 政治学科 准教授 宮田 智之 先生
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