選挙のルールは当事者が決める! ルールメイキングの政治学
短くなった選挙運動期間
候補者が有権者に対して投票を呼びかけたりすることを選挙運動といいますが、日本では、選挙運動を行うことのできる期間が選挙法によって定められています。例えば衆議院選挙の場合、選挙運動が認められる期間は12日間で、それ以外の選挙運動は禁止されています。つまり、候補者はたった12日で政策を有権者に伝えなければならないのですが、実はこの期間は、1950年に現在の選挙法が制定された時点では30日間とされていました。選挙運動期間は最初から短かったのではなく、複数の法改正を経て短くなったのです。
期間短縮で得をするのは誰?
過去の法改正では、選挙運動期間を短縮する理由は「選挙費用の削減」などと説明されてきたのですが、短縮によって誰が得をするのでしょうか。結論から言えば、それは現在議員の職にある現職候補になります。選挙の勝敗を左右する要素は様々ですが、重要な要素の1つが候補者の知名度です。現職候補は、既に議員という公職についているため、選挙区で高い知名度を持ちます。他方で、現職に挑戦する新人候補は、タレントや政治家の子息でもない限り知名度で劣ることが普通です。ゆえに新人候補は、知名度を高めるために現職候補よりも選挙運動に力を入れて自身の名前や政策をアピールする必要があるのですが、選挙運動期間が短いとその機会が少なくなり、知名度の向上が困難になります。つまり、短い選挙運動期間は、次の選挙でも当選したい現職候補にとって都合がよいのです。
当事者がルールを変える選挙法
選挙法の特徴は、選挙の利害関係者である現職の議員が、自らルールを変えられる点にあります。選挙運動期間の短縮も、それが現職議員にとって有利であるからこそ、なされてきたルール変更の1つです。この例に限らず、選挙法をめぐっては、様々な勢力が自分に都合のよい法改正を実現させようと行動し、互いに政治的な駆け引きを繰り広げます。このような特徴を持つため、選挙法は法律学だけでなく政治学においても、重要な研究対象となっています。
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先生情報 / 大学情報
新潟大学 法学部 法学科 准教授 益田 高成 先生
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