税の負担の公正さ
政府があるから経済活動ができる
アメリカのL・マーフィー/T・ネーゲルという政治学者は、「どうしたら税の負担が公正になるかを議論するには、そもそも生活というものは、政府がないと成り立たないという認識が必要だ」と言います。政府がないと、誰も経済活動ができません。会社員であれば、会社に到着するまで、安心安全に出社できたのは、道路、信号、警察などがあったおかげです。こういうものなくしては、経済活動は成り立たちません。つまり、政府が存在するから生活が成り立っているのです。
給料が30万円なのに、そこから税金が3万円引かれていると、「政府に3万円取られた」と感じます。できることなら、3万円を取り返したいという気持ちを持ちます。しかし、その30万円には政府のバックアップがあって成り立っている部分があるのです。だとすると、自分に正当なのは27万円です。政府に会費を払ったあとのお金だから正当なのです。このL・マーフィー/T・ネーゲルの理論は、一見すると、「税金に文句を言うな」とも受け取れます。しかし、この理論が言いたいのは、「社会はお互い支えたり、支えられたりのなかで成り立っている」ということです。支えたり支えられたりの一部を政府が行っているのです。
望ましい社会の在り方
この時、考えなければいけないことは、「どういう支えがいいのか」ということです。ここが税金を考える時のポイントだとL・マーフィー/T・ネーゲルは言います。自分がいくら払うかということではなく、どういう支えの仕組みをつくることが重要なのか、別の言葉で言うと、どういう社会状態が望ましいのか、どういう社会をつくるのか、その社会を実現するために、企業はこういう活動をする、個人はこういう活動をする、ではそのために税金はどのくらいかかるのか、という形で考えるのです。
税の負担の公平さというのは、望ましい社会の在り方と切っても切れない関係になっているのです。まず望ましい社会を議論しようというのがL・マーフィー/T・ネーゲルの主張です。
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