ジャズ即興演奏を通じて、AIと人間が分かりあう時代に
作曲家の頭の中を再現するAI?
バッハなどの古典音楽を聴くと「どうやってこんな曲を作ったのだろう」と思いませんか? しかし、本人に聞くことはもうかないません。でも、AIによってバッハの頭の中が再現できたら、バッハのやり方をヒントに、新たな音楽を生み出せるかもしれません。このように、人間の音楽的知識を取り込んだ「対話型遺伝的プログラム」を用いて音楽を作るという研究が進んでいます。
具体的には、人間がジャズの即興演奏を習得する過程をコンピュータに学ばせ、その法則に則って作曲をさせます。その音楽を人間が評価しコンピュータにフィードバックすると、コンピュータは学習を繰り返しながらまた作曲を行うというものです。
音のとらえ方の違いをAIと共有する
ジャズ即興演奏の習得過程の研究で明らかになったのは、人間は楽器などの音楽経験によって音の認知の仕方や感じ方が違うということです。同じ楽器でも、音を「ドレミ」の階名を使って認識・楽器を演奏する人間と、音をイメージのまま演奏動作に結び付けられる人間がいます。さらにギターの経験者は、弦を押さえる指の形で音を把握する癖がありました。同じジャズ即興演奏でも人によって個性が出るのは、このような音のとらえ方の違いが原因だと考えることができます。AIにこのような違いを学習させれば、人間と同じように作曲することができるでしょう。
AIと対話しながら共に成長する
この対話型遺伝的プログラムを用いたAIは、ディープラーニングのような、非常に小さな演算を莫大な量積み上げるために全体像を人間が把握できなくなる深層学習のAIとは異なり、人間と共に成長していくAIと言えます。つまり、人間のアイデアを栄養にして新たなものを生み出し、人間はそこからまた新たな知見を得て、AIにフィードバックをしていくという関係です。いつか、人間だけでは予想もつかない結果を生み出してくれるでしょう。そして、そう遠くない将来、AIと人間が一緒にジャズ即興演奏をする日が来るかもしれません。
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東京都立大学 システムデザイン学部 インダストリアルアート学科 助教 安藤 大地 先生
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