ゴミから生まれたバイオ炭 土壌改良で循環型社会に貢献

ゴミから生まれたバイオ炭 土壌改良で循環型社会に貢献

有機系廃棄物から作る万能の炭

私たちの社会から出るたくさんの有機性のゴミ、例えば下水汚泥や家畜のふん尿、農作物の茎や葉などの農業残さ物には、植物の栄養となる成分が残っています。しかし、現状ではほとんどが利用されていません。このような有機物(バイオマス)を有効利用する方法のひとつが「バイオ炭」です。バイオ炭は一般的な炭と同様に有機物を酸素のない状態で加熱し炭化させたものですが、木炭のように高度な製造技術はいりません。バイオ炭は燃料になるだけでなく、土に混ぜれば土壌改善、作物の生長促進、有害物の吸着などさまざまな能力を発揮します。また土壌に炭素をためることになるので、温暖化ガス対策としても期待されます。

国際共同プロジェクトでも活躍

例えば、エチオピアのタナ湖では、外来種のホテイアオイの過剰な繁殖による生態・社会経済的な問題が深刻化しています。このホテイアオイからバイオ炭を作り、それを使ってエチオピアの粘土質の土壌を改善して、農作物の栽培を可能にする国際的な取り組みが行われています。

穴だらけの構造

バイオ炭の土壌改良能力のカギは、その多孔性です。バイオ炭の断面を顕微鏡で見ると、ハチの巣のような穴が無数にあいているのがわかります。この穴に土壌中の微生物がすみついて増殖し、土の中の有機物を分解して植物に必要な栄養分を供給してくれるのです。また多孔質な特性には、乾燥した土壌の保水性を向上させて、逆に粘土質の土壌の水はけをよくする水の調整機能があります。さらに無数の穴で表面積が増えるため、重金属など土壌の有害物質の吸着にも役立ちます。バイオ炭は土壌の生物性、化学性、物理性の全方位を改善してくれるのです。
バイオ炭は原料とする有機物によって、その性質に違いが生じることがわかってきました。それぞれの特性を化学分析などで調べて、実際に土に混ぜたときの土壌環境の変化が研究されています。有機系廃棄物にはまだ利用されていないものが多く、今後さまざまな性質のバイオ炭ができるかもしれません。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

創価大学 理工学部 共生創造理工学科 教授 佐藤 伸二郎 先生

創価大学 理工学部 共生創造理工学科 教授 佐藤 伸二郎 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

土壌学、バイオ炭、廃棄物処理工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

私の人生の転機となったのは、大学時代の留学です。ずっと興味のあったブラジルに行き、そこでアマゾンの森林破壊を目の当たりにした経験が、環境問題に貢献したいという今の研究につながっています。若いときはいろいろなことに興味を覚えると思いますが、そういった興味が人生の何かのきっかけになる可能性は少なくありません。面白いと思ったことがあれば、調べたり勉強したりしてその興味を深めてください。将来きっと役に立つので、わくわく心を持っていろいろな興味にチャレンジしてほしいです。

先生への質問

  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

創価大学に関心を持ったあなたは

創立以来、学生と教職員が大学を創る者として、互いに対話、研鑽を重ねながら大学の価値を高めてきました。こうした教育・研究および社会貢献の成果は、文部科学省のGP(Good Practice)採択など、外部からの高い評価となり、普遍的な価値として、現代の大学教育に大きな示唆を与えています。また国際化が叫ばれる中、62カ国・地域、225大学との交流協定は、真の国際人養成に大いに貢献できることでしょう。