利用者の視点に立ったものづくり! スマート農機で農家を支える
デザイン思考のものづくり
ユーザーがどうふるまっているかを調査し、ニーズとともに真の課題に応えようと試みる「デザイン思考」という手法があります。これをものづくりに導入し、スマート農業機具(農機)の開発が行われています。例えば田んぼや畑、ビニールハウスの環境情報を取得し、その情報をもとに「どのような作業をすればいいのか」を提案するスマート農機です。日本では農業の担い手不足や、若手の新規参入が進んでいないことが問題視されています。また担い手を確保しても、新人農家にはノウハウがないため、農作業で困りごとがあってもどう対処すればいいかわからない場合が多くあります。こうした悩みの解決をめざし、研究が始まりました。
玉ネギが傷む原因を発見
農地や保管庫に設置する小型無線センサデバイスの開発が行われています。農地の気温、湿度、気圧などを取得でき、農家はスマホで情報を確認します。試作品の実証実験で特に成果が上がったのが玉ネギの保管庫です。多くの農家は、倉庫内で保管している玉ネギの一部にカビが生えて出荷できない、という悩みを抱えています。そこでカビ対策のヒントを得るために出荷前の玉ネギの保管庫にデバイスを複数台設置し、環境情報が集められました。すると倉庫内の湿度にばらつきがあり、特に入り口から遠い真ん中は湿度が高くカビが生えやすいことがわかりました。空気の通りが悪く、湿度が上がりやすいことが原因だったのです。農地においてもカビの発生源やその原因がわかれば、対策を考えやすくなります。
スマート農機を身近に
無線センサデバイスは民間企業からも発売されていますが、1台10万円以上します。そのため農家へのインタビューでは、「スマート農機はぜいたく品だ」という声も多く聞かれました。導入のハードルを下げるためには、安くつくることが重要ですが、研究が進んで、約1万円でも無線センサデバイスをつくれるようになってきました。より農家が手に取りやすくなるよう、デバイスの改良が進められています。
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山口大学 国際総合科学部 国際総合科学科 教授 杉井 学 先生
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