太古の名もなき人々が生きる姿を、数理モデルで解き明かす!
「もの」から「人」を知り、歴史を掘り起こす
遺跡や出土品など「もの」を見るのが考古学なら、文化情報学(人類学)は「もの」から見える「人」の姿を歴史学と数学的手法を掛け合わせて解明する学問です。ある時代や地域の人々の暮らしや考え方について仮説を立て、時間変化する事象を数式化した「数理モデル」によってシミュレーションし、仮説の「確からしさ」を検証します。例えば、インダス・メソポタミア・エジプト文明が交錯するオマーンの先史海洋民族の貝塚文化なら、印章や狩猟道具の分析から、彼らの言語と交易の多様さ、民族的アイデンティティが混在する姿が見えてきます。教科書には記されない名もなき人々がどんな世界観を持って暮らしていたのか、新たな歴史を見いだせるのです。
縄文は本当にハッピー&エコな時代?
最近の「縄文ブーム」では、「争わず平和で、エコな狩猟採集生活を1万年も続けてきた縄文人」というストーリーが人気です。しかし、人口や生活レベルが1万年も変わらない社会など、どんな数理モデルでも解き明かせません。縄文人は本当にエコだったのでしょうか? GIS(地理情報システム)によるシミュレーションから、縄文人は環境資源を使い尽くして別の場所に移る生活スタイルに進化したとわかっています。弥生時代に農耕が爆発的に広がった理由は長らく解明されなかったのですが、データは「自ら種をまくしかなかった」縄文人の姿を物語っており、有力な説と考えられます。
「飛鳥美人」が漢語で話したら?
博物館展示にVRを活用することで、文化財の出自や、たどってきた道筋を表現できます。例えば、国宝高松塚古墳壁画の女性は唐との関わりが指摘されますが、展示では教科書でおなじみの「飛鳥美人」という和名で紹介されることが多いのです。もし、壁画の女性が漢語を話すVR展示があれば、「飛鳥美人」には見えなくなるでしょう。データサイエンスは、現代に生きる私たちと過去に生きた人々をリアルに結びつける技術でもあります。
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先生情報 / 大学情報
同志社大学 文化情報学部 文化情報学科 准教授 津村 宏臣 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
文化情報学、時空間情報科学、人類学先生が目指すSDGs
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