地形の詳細をとらえた「CS立体図」で土砂災害を予測
もろく崩れやすい日本の山
日本は土砂災害が多く、近年では平均で年間1,400件を超える土砂災害が発生しています。その理由の一つは、日本の山がもろく崩れやすい特徴を持っていることです。例えば同じ花こう岩でも、オーストラリアの岩盤はひび割れが少ないのに対し、日本の岩盤はさいの目のように割れ目が生じています。これは日本が4枚のプレートが押し合う境界上にあって、複雑な力を受けているためです。そうしたもろさ故に、日本の山は自重で崩れてしまいやすく、エベレストのような高さまでは隆起できません。こういった日本の山の特徴を踏まえたうえで、土砂災害の研究に力を入れる必要があります。
CS立体図で災害を予測
土砂災害の解析や予測に利用されているのが「CS立体図」と呼ばれる地形表現図で、従来の地形図よりも視覚的・感覚的に地形を判読できます。CS立体図は、森林の下に隠れた地形も測量できる「航空レーザー測量技術」で得られたデータを利用して作られます。詳細な地形の様子が再現されており、土砂崩れによる崩壊の跡地や湧水なども読み取ることができます。このCS立体図と航空写真や現地での調査を照らし合わせ、さらに湧水や植生などとの関係も考慮しながら土砂災害を予測する研究が進められています。CS立体図は長野県の公務員の方が発案したもので、作成方法も公開されていて、誰もが自由に作成できます。最近では、静岡県、長野県、岐阜県、兵庫県、石川県など全国の自治体に加えて、国や研究機関でもインターネットでCS立体図の公開を始めています。
災害対策に役立つ地形図の普及を
現在全国各地で使われているハザードマップに加えて、よりリアルな地形を把握できるCS立体図が共有できれば、「危険度の根拠となる地形」がわかるため応用が利き、明確な危険度がつけられない場所についても状況を判断しやすくなります。こうした詳細地形データを利用して、各都道府県での防災対策や森林計画のレベルアップを図るための普及活動も行われています。
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石川県立大学 生物資源環境学部 環境科学科 教授 大丸 裕武 先生
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