講義No.10523 政治学

あなたは選挙に行く? 「18歳選挙権」と若者の政治意識

あなたは選挙に行く? 「18歳選挙権」と若者の政治意識

18歳選挙権

2015年に成立した改正公職選挙法によって、選挙で投票できる年齢が引き下げられました。これにより現在は高校生も18歳以上であれば選挙に参加し、自分が選んだ候補者に票を投じることができます。それまで選挙権は「20歳以上」でしたが、他国を見ると18歳は一般的で、16歳からという国もあり、日本もようやく国際的な水準に並んだといえます。社会が成熟するにつれ深刻化し続ける若年層の政治離れを、「18歳選挙権」が解決すると期待されましたが、この導入後に若者の政治意識がいかに変化したのかを研究することは、政治学としても非常に重要です。

データからみる若年層の政治への意識

若者の政治意識を具体的に知るために、主に統計調査で得られたデータが用いられます。2016・2019年参院選にあたり実施された高校生対象の調査データの分析からは、政治への関心は18歳選挙権導入後も盛り上がっているとは言えず、また、より身近なはずの地方選挙に対する関心が国政選挙に比べ低いこともわかっています。政治への関心の低さは投票率にも表れており、総務省の調査によると、20歳未満の投票率は、「18歳選挙権」が導入された2016年に比べ2019年は下回っています。また、20歳代の投票率は全年代で最も低い傾向にあり、大学生の投票率の低さも大きな課題です。

与えられた権利

データから見えてくる政治への関心・参加意識の低さは、選挙の争点となっている社会問題に対して、年齢的に実感しにくいことも要因の一つでしょう。また、18歳選挙権が一方的に「与えられた権利」であり、当事者意識を持ちにくい点も大きいと考えられます。
日本には財政問題や少子高齢化、災害対策など問題が山積みですが、こうした問題に向き合い、より良い社会をつくっていくためには、一人でも多くの国民が政治について考え、参加することが不可欠です。そのためにも、若年層の政治関心に着目し、政治により参加しやすくなる道を探る学問的なアプローチの意義は今後も高まるといえるでしょう。

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先生情報 / 大学情報

神奈川大学 法学部 自治行政学科 教授 大川 千寿 先生

神奈川大学 法学部 自治行政学科 教授 大川 千寿 先生

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政治学、現代日本政治、政治過程論

先生が目指すSDGs

メッセージ

日本には1億人超の有権者がいますが、一人ひとりがしっかりと自立し、他者とつながり、政治や社会について考えていかないと、国は成り立ちません。もしあなたが「自分一人の意見では何も変わらない」「政治は自分とは遠いところにある」と感じているとしたら、そうではないのです。
政治の原点は一人の市民の意見です。私たち一人ひとりは、皆社会の構成員として重要で、責任を担っているのです。この大きな社会にあって、小さな「一人」の存在・声が重要だということを忘れず、社会や政治について広い視野で考えていってください。

先生への質問

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神奈川大学に関心を持ったあなたは

1928年創立以来、真の実学をめざし、自ら成長できる人材を育成してきました。近年では2021年、グローバル系3学部が集うみなとみらいキャンパスが誕生。2022年、「建築学部」を開設、2023年には理工学部を改組し「化学生命、情報学部」を開設。文理11学部すべてを横浜エリアに集結させ、世界レベルをめざす総合大学として、新たな一歩を踏み出しました。
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