「かわいい」や「意外」って感じるAIは必要なの?
「かわいい」を分類するAI
AI(人工知能)技術の進歩は目覚ましく、今では多くの問題の解決に使われていますが、そのほとんどは論理的な活動を司るといわれる左脳の働きをモデル化したものです。これに対し、芸術分野など右脳が大きく関わる問題を処理するAIも取り組まれています。その一つが、「かわいい」から派生する「キモかわ」や「グロかわ」「病みかわ」などの画像をAIで分類する試みです。AIといってもコンピュータでの処理である以上、画像に対してなんらかの特徴づけが必要となりますが、「かわいい」「きれい」などは、「大きい」や「重い」と違って客観的な尺度がありません。さらに、「キモかわ」や「グロかわ」は、一般的に「かわいい」とされる色や形などの物理属性からは乖離(かいり)しているため特徴づけが困難です。
「かわいい」を構成する特徴を抽出
そこで、画像の最小単位である「ピクセル」ごとの色や、ピクセル同士のつながりなどに着目した3種類のフィルターを設計し、「かわいい」画像から「かわいい」特徴を数値化した「特徴量」を抽出します。そして、「特徴空間」と呼ばれる空間において、例えば「キモかわ」や「グロかわ」の画像の特徴量によるベクトルの空間配置が離れていれば、それをもとに分類することができるのです。
日常生活に寄り添うAI
「かわいい」とは別の感性的価値として「意外性」というものがあります。意外性のある俳句が我々の情動に訴えかけることから、俳句生成方法として意味的に離れた意外性のある単語を組み合わせつつ、主題もはっきりするように、「敵対的生成ネットワーク(GAN)」という技術を用い、人が詠んだ俳句に近づけていきます。
これらの研究の最終目標は、人間の情動を理解して生活に寄り添うAIの開発です。日常生活の中で、時には教師、時には友達になれるようなコンピュータです。近い将来、あなたの作った俳句を添削してくれて、「グロかわ」について会話もできるAIを搭載したコンピュータが当たり前になっているかもしれません。
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神奈川大学 情報学部 システム数理学科 教授 秋吉 政徳 先生
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