「観光」ってどういうことだろう?
身近な観光地ハワイ
ハワイは、日本人にとって、もっとも身近な外国の観光地の一つです。1964年に日本で海外旅行が自由化されると、ハワイを訪れる日本人観光客の数は、1978年には年間50万人、1996年には200万人と激増しました。最近では、多少減ってはいますが、それでも年間100万人もの日本人がハワイを訪れています。
ハワイに何を求めるか
日本人は何を求めてハワイを訪れるのでしょう。ハワイ州観光局のホームページにある日本人向けのPR文を読むと、大自然や、それをとりまく光と風、豊かな文化、人々の笑顔、アロハスピリットなど、癒やしやリラックスなどと結びついた言葉が目立ちます。同時に、「何度来ても楽しめる、いくつもの顔をもつハワイ」というイメージが強調されているのがわかります。つまりそれらが、現在の日本人をハワイに導く観光上のキーワードだと言えます。ところが、バブルにわいた1990年代、日本人観光客に対するキーワードは「ショッピング」と「ビーチ」で、ブランド製品が安く買えるビーチリゾートとして宣伝されました。さかのぼって1960年代では、ハワイは日本人にとって「憧れの地」でした。つまり、時代の変化とともに、人々が欲しがるものが変わり、それに応じて「観光地・ハワイ像」が作り変えられているのです。
「観光」の意味を問い直す
こうしたマーケティング戦略が経済効果を生むことは確かですが、その一方で、観光がその土地の人々の暮らしや自然に与える影響について考えることも必要です。ハワイを例に見ても、年に2万人の観光客が訪れる場合と、200万人が訪れる場合とでは、ハワイ社会に対する影響力が根本的に異なります。「観光」が21世紀最大の産業とも言われる現在、観光のあり方を問い直し、歴史学や文化学、社会学や政治学など、さまざまな観点から研究する姿勢が、今後さらに求められるでしょう。そのときハワイは、非常に興味深い研究対象になるはずです。
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