講義No.11266 政治学

民主主義って多数決? 民主主義を学ぶ

民主主義って多数決? 民主主義を学ぶ

民主主義とは

デモクラシー・民主主義とは、社会を構成する民衆や国民が、直接もしくは自由選挙で選ばれた代表者を通じて社会全体にかかわる決定を行う統治制度のことです。その起源は古代ギリシャにありますが、大きく発展したのは17~18世紀の市民革命以後のことです。この時期に、国民主権、基本的人権の尊重、民主的政治制度の確立など、近代国家の原型が形成されました。

民主主義とは多数決?

多くの人が民主主義と聞くと真っ先に思い浮かぶのは「多数決」でしょう。フランス人のトクヴィルは19世紀前半にデモクラシーをいち早く評価した人ですが、他方で、デモクラシーには「多数者の専制」の危険があるということを指摘した人としても知られています。例えば、100人のうち51人がイエスと言い、49人がノーと言ったとします。多数決の原理では51人の側の意見が通るわけですが、49人の権利や自由が多数派による決定によって脅かされたとしたらどうでしょう。「民主主義と何か」という問題は存外難しい問題です。

リベラル・デモクラシーの試練

先進各国のデモクラシーは、2つの世界大戦を経て発展を遂げました。とくに第2次大戦後、ファシズムの反省から、「多数者の専制」の危険が意識され、個人の自由や人権の擁護が重視されました。その後、経済成長もあって、民主主義が十分に市民のあいだで定着すると、民主主義のさらなる充実が課題とされ、市民の政治参加が促進されていきました。
しかし現在、デモクラシーは新たな転換期を迎えています。自由競争や規制緩和がもたらす経済格差、強権的体制をとる国の経済的躍進などから、先進国では民主主義に対する自信の揺らぎが生じています。デモクラシーの研究は、これからのわたしたちの針路を考えるうえでますます重要な意味を持ってくるはずです。

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大阪公立大学 法学部 法学科 教授 野田 昌吾 先生

大阪公立大学 法学部 法学科 教授 野田 昌吾 先生

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政治学、ヨーロッパ政治史

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メッセージ

あなたは、政治学と聞くと「難しそう」と思うでしょうか。しかし、政治を学ぶための教材や資料は、いま私たちが生きている日本という国であり、世界であり、また過去の歴史なのです。
自分の知っている範囲でしか世の中を見ていないと、将来の希望や夢の選択肢が狭まります。いろいろなものさしを手にしてみると、世界の見え方が違ってくるものです。大学での4年間を狭い意味での学びではなく、世界を広げるための学問をする場としてとらえ、知の探究を楽しんでもらえればと願います。

先生への質問

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大阪公立大学に関心を持ったあなたは

2022年4月、大阪市立大学と大阪府立大学が統合し、大阪公立大学が誕生しました。大阪市立大学、大阪府立大学は共に約140年の歴史ある大学であり、水都として交通の要衝であった大都市大阪とともに発展してまいりました。この地の利を生かし、理論と実際を有機的に結合することにより、両大学は大都市大阪で生活する人々が必要とする精神文化の発展や産業と経済の振興を担う中心機関としての役割を果たしてきました。本学はさらなる異分野を融合・包摂した新たな学問の創造と多様な世界市民の育成を目指します。