日本人の幸福度を上げる政策って?
低迷する日本人の幸福度
誰もが「幸せな人生を送りたい」と思うことでしょう。幸せは人それぞれですが、国民の平均幸福度はアンケート調査を参考にできます。国連による世界幸福度ランキングでは、日本人の平均幸福度は先進国最低水準です。そして日本の幸福度は戦後から変化していません。一方、2022年に5年連続で幸福度ランキング1位の国はフィンランドです。社会保障が手厚く将来への不安が少ない、失敗してもやり直しが利く社会である、1カ月ほどの夏季休暇をとるなど、余暇の満足度が高いことなどが理由として考えられます。幸福度の高い国の政策を分析することで、日本の幸福度を高める政策のヒントが見えてきます。
収入重視は幸せになれない?
一般的に諸外国では、所得が一定水準に達すると、所得が増大したとしてもそれほど幸福度は上昇しなくなります。例外は日本とアメリカ、イギリスで、この3国は、経済的成功を幸福に結びつける思考習慣が強いといえます。しかし、誰もが金持ちになれるわけではありません。ハーバード大学による人の生涯を調査した研究では、お金を重視する人の幸福度は低く、家族や余暇などを重視する人のほうが高いことがわかっています。さらに日本は、将来への不安も大きいことから、若者の幸福度が低いことが特徴です。
経済重視から幸福度重視の政策へ
このように経済成長が国民の幸福に直結しないことから、世界では、経済指標のGDPではなく国民の豊かさを示す「beyond GDP」に、さらに経済重視政策から「ウェルビーイング(幸福度)政策」に移行することの意義を議論する動きが活発になっています。幸福度は暮らしやすさや地域性のほか、環境問題、社会保障、税制といったあらゆる政策に関わります。また、心理学、哲学、経済学、政策学など多方面での検証や、諸外国との比較では宗教や文化、価値観の考慮も不可欠です。こうしてさまざまな視点から検証することが、日本の未来の幸福度を向上させる手がかりとなるのです。
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南山大学 総合政策学部 総合政策学科 教授 鶴見 哲也 先生
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