講義No.10949 建築学

社会実験からにぎわいのあるまちづくりを考える

社会実験からにぎわいのあるまちづくりを考える

駅前の空き地に何が必要か

いつも利用する駅の前に空き地があるとします。その空き地の利用の仕方次第でまちのにぎわいが決まるとしたら、その地域のニーズや求める姿に合った場所や施設となるべきです。では、地域のニーズや求める姿はどうやって見極めればいいのでしょうか。

実験的取り組みでニーズを探る

ある駅前の空き地では、3回の実験的な取り組みが行われました。1回目はアートをテーマにした、地元のチョーク製造会社の協力を得たチョークアートのイベントの開催です。開催日が節分だったため、空き地に描かれた大きな鬼の絵に、参加者がチョークで色を塗るというものでした。家族単位で参加する割合が多く、子ども連れの家族というターゲットが存在することがわかりました。2回目はスポーツをテーマに、大学の陸上競技部駅伝チーム監督によるランニング指導やヨガ教室、親子を対象としたワークショップのほか、キッチンカーでの飲食の提供も実施されました。ここでも、やはり親子連れのニーズが高いことが再確認されました。3回目は2日間連続で空き地を朝から開放したとき、どのような行動が生まれるか実験で検証し、当日は、飲食業者の出店、地元の歴史まちづくり団体によるイベント、音大生による演奏会などを設定し、空間の使われ方もリサーチされました。

地域に合わせたまちづくり

これらの社会実験から、駅前のこの場所は子どもを遊ばせることができ、多世代が交流できるような空間が望まれていることがわかりました。次の段階では、この結果をベースとしてさらなる土地利用を試み、より的確なニーズをつかんでいくことになっています。
土地の利用やまちづくりは、ハード的な整備はもちろん必要ですが、その前提として、暮らす人にどんな影響を及ぼすのか、暮らす人が何を望んでいるかというソフト面の調査が重要です。地域ごとに、住んでいる人も意見も、その場所に対する思いも違います。その声に耳を傾け、いかに適切な利用を導くかがまちづくりの鍵となるでしょう。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

神奈川大学 建築学部 建築学科 准教授 上野 正也 先生

神奈川大学 建築学部 建築学科 准教授 上野 正也 先生

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建築学、都市計画学

先生が目指すSDGs

メッセージ

人が生きていくには、まちや空間から逃れることはできません。「建築」はまちや空間という、非常に身近なものを対象とする学問です。あのまちのこういうところが好き、こういう空間が好きなどと思ったことはありませんか。そういう思いを積み重ねることは、とても大切です。今のうちから、身近なものに目を向けて、観察眼を養いましょう。
建築は工学に限らず幅広い分野の知識を必要とします。たくさんの知識や技術を組み立てて、答えを作っていける総合的な学問分野だと言えます。ぜひ一緒に建築を学びましょう。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

神奈川大学に関心を持ったあなたは

1928年創立以来、真の実学をめざし、自ら成長できる人材を育成してきました。近年では2021年、グローバル系3学部が集うみなとみらいキャンパスが誕生。2022年、「建築学部」を開設、2023年には理工学部を改組し「化学生命、情報学部」を開設。文理11学部すべてを横浜エリアに集結させ、世界レベルをめざす総合大学として、新たな一歩を踏み出しました。
また返還不要な奨学金制度も充実。12月下旬に全国22会場で実施の給費生試験で合格、入学すると、4年間で最大880万円の奨学金が給付されます。