不公正な時代

不公正な時代

1分間に20人の子どもが亡くなる

20世紀の後半から急速にグローバリゼーションの時代となり、国境を越えていろいろな問題が起こりはじめています。これまでは日本とは関係があまり緊密ではなかったアフリカでは、栄養失調の人が何億人といて、1分間に20人くらいの子どもが死んでいます。その状況と果たして無縁でいられるのかということです。人々を公正に扱うための基準である正義は、かつて日本国内だけの問題でした。しかし、地球が一体化した今、地球上の大きな格差、貧困の一方で、大きな富をもっている人たちの存在という不平等を考えなくてはいけない時代になってきました。
例えば、たまたま日本で生まれた子どもは80年間生き、たまたまアフリカのある国で生まれた子どもは30年間か、35年間しか生きられない。その生命の格差。これは自然現象として放置していいのでしょうか。気候が過酷であるとか、食糧が入手できないとか、そういう自然の問題ということで済ませていいのかということが、突き付けられているのです。

食糧は130億人分あるのに餓死する人たち

仮に地球に70億人くらいの人がいるとして、食糧が30億人分しかないということであれば、相当数の人は飢餓状態にならざるをえません。ところが、現実問題として、食糧は130億人分くらいあります。地球上の全員が食べることができるという客観的な条件があるわけです。にもかかわらず、人々が飢えています。これはかなり不公正な時代だと言えます。日本は年間2000万トンもの食糧を捨てています。
これをどのように是正するかというのが、国境を超えた公正の問題であり、国連は総会で、2015年までに世界の貧困を半分にするという計画を立て、実行しています。その中で豊かな国は、自国のGDPの0.7%を拠出することが国際合意になっています。しかし、アメリカも日本もその合意を実現していません。実現しているのはデンマークなど北欧の4カ国ぐらいにとどまっており、不公正な時代は今も続いています。

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名古屋市立大学 人文社会学部 現代社会学科 教授 伊藤 恭彦 先生

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