トウモロコシから世界を俯瞰する
トウモロコシは食べるだけではない
一口に「トウモロコシ」といっても、人々の食用として使われるのはそのごく一部にすぎません。例えばノートの表紙などに光沢があるのは、コーンスターチというトウモロコシでんぷんでコーティングをしているからです。また、トウモロコシの多くが家畜の飼料として使われています。
輸入でまかなわれるトウモロコシ
現在、日本ではトウモロコシをほぼ輸入でまかなっています。総量は年間約1600万トンで、そのうち約1200万トンが家畜の飼料であり、残りの約400万トンが産業用途として使われています。日本の畜産業は輸入のトウモロコシがなければ成り立ちません。輸入量の8~9割が米国からです。
過去半世紀以上にわたり、日本は基本的に工業製品を輸出し、代わりに食料を輸入してきました。自国で消費する以上のものが生産できた国と、その品目が不足している国が、国際間で相互依存関係を結んでいます。安定的な輸出入の状況は、両国の関係をうまく構築した多くの関係者の努力の結果と言えます。
農産物が工業用の原材料となる
米国では1950~60年代にハイブリッド・コーンという収量の多い種が開発され、生産量が爆発的に増加しました。生産過剰が常態化したことで大量消費できる市場が必要になり、米国内飼料需要だけでなく輸出が拡大し、さらに2000年代以降はバイオ燃料という新しい用途が考えられました。当時は環境規制の強化や中東に原油を依存していることが問題となり、多くの課題を解決することが求められました。トウモロコシからバイオ燃料を生産することで、農村地帯に新たな雇用を創出することもできます。国内の資源をどう利用し、どんな産業を作り出していくかを長期的な国家戦略として考えたことで、トウモロコシのバイオ燃料が生み出されました。当初は農産物としてのみ利用されていたものが、工業の原材料として新たな用途に使われている例はほかにもあります。このように農産物ひとつから、世界全体のさまざまな事象が見えてきます。
参考資料
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宮城大学 食産業学群 フードマネジメント学類 教授 三石 誠司 先生
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