持続可能な食料生産のための経済学
資源経済学とは?
人間にとって欠かすことのできない食料を生産するためには、水、農地、森林、水産資源などが維持されなくてはなりません。資源経済学は、こうした資源を持続可能な形で利用し、その価値を最大化する学問です。例えば海のアワビを大量に獲れば、短期的には漁業収入は増えます。しかしながら、長期的には親の数が減少し、資源の減少・枯渇を招く恐れがあります。どれくらいのアワビを獲るかを考える場合、アワビの資源量や加入量という生物的なパラメータに加え、価格やコストなどの経済的なパラメータと合わせて最適解を導き出します。このように理系と文系とが融合する学際的なところも資源経済学の魅力の一つです。
農業による環境破壊
インドネシアの山間部では森林伐採が進み、伐採された土地にはキャッサバなどの食糧作物が植えられています。現金収入を最も得られるのはクローブなどの多年生作物ですが、収穫まで数年かかるため、毎年収穫できる食糧作物を生産してしまうのです。また、キャッサバは面積あたりのカロリー生産量が高く人気があるのですが、地中の塊根を収穫するたびに土壌流出を引き起こします。流出した土は下流のダムに流れ込み、ダムが土砂で埋まり、水不足や洪水の危険性を増しています。食糧作物を作るために森林が伐採され、土壌流出を起こしてダムを埋めてしまうという環境破壊の連鎖が起きています。
日本の耕作放棄地
日本では耕作放棄地の増加が課題となっています。かつては傾斜地に水田を切り開いた棚田が各地で見られました。水田は「緑のダム」とも呼ばれ、大量の雨が降っても水を蓄え、緩やかに山の下へ流します。しかし、耕作放棄が進むとダム機能は失われ、農業の衰退だけでなく災害のリスクを高めます。耕作放棄地の背景には、農業の生産コストの問題もあり、耕作放棄地の解決のためには経済的な視点が不可欠です。このように持続可能な農業・漁業のためには、さまざまな角度から課題を考える必要があり、その一つの手段が資源経済学といえます。
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先生情報 / 大学情報
宮城大学 食産業学群 教授 川島 滋和 先生
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