講義No.10552 看護学

痛みをともなう医療処置を受ける子どもへの看護

痛みをともなう医療処置を受ける子どもへの看護

恐怖や不安を和らげるケア

3~6歳の幼児期の子どもが、採血などの痛みをともなう医療処置を受けるときの恐怖心や不安を和らげるにはどうしたらよいでしょうか? この年齢の子どもは、認知機能が発達途上です。話し言葉は身につきつつありますが、複雑な感情は上手に表現できないので、ただただ拒否をするという状態になりかねません。そのときに、発達段階に合わせて説明をし、医療処置への不安の軽減や子どものがんばる気持ちを引き出す小児看護のケアをプレパレーションと言います。

イメージを助けるためのシミュレーション

幼児期の子どもは、初めてのことや見たことのないものをイメージするのが難しい発達段階です。医療処置の現場は家庭とは違う、いわばアウェイの環境であり、知らない人に囲まれ、何をされるかわからないという不安が高まります。こうした環境の中での採血を、言葉だけで説明して子どもの理解を得るのは困難です。そこで、子どもを採血の前に実際の処置の場所に案内し、手順を教えます。また、「こんなに小さな注射器だよ」と実際のものを見せることもあります。この場所で、これを使って、親もそばにいてくれる、という具体的なイメージを持ってもらうことで、がんばって処置を受ける方法を一緒に見つけていくのです。もちろん大人に説明するような難しい言葉では理解できません。聴診することを「もしもし」、吸入を「もくもく」というように、擬態語や擬音語を使いながら子どもにわかりやすい言葉で説明する必要があります。

「痛い」は「気持ちの痛み」も表す

子どもは怖いと思ったり、不安が高まったりすると痛みが増幅します。実際には痛みをともなわない処置であっても、子どもが不安だと思うことにはケアが必要です。子どもはさまざまな場面で「痛い」と言うことがありますが、それは身体的な痛みだけではなく、気持ちの痛みを感じているからです。それらすべての痛みを和らげるために、処置の現場では実際の子どもの様子を観察し、発達段階に合わせたプレパレーションを行う必要があるのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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宮城大学 看護学群 看護学類 准教授 三上 千佳子 先生

宮城大学 看護学群 看護学類 准教授 三上 千佳子 先生

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メッセージ

現在は少子高齢化や核家族化の影響で、子どもに関わった経験のない人が増えています。そのため、小児看護のような病気の子どもと関わることにためらう人も少なくありません。子どもが何を考えているかわからず、苦手意識があるのです。
大学の小児看護学の授業では、最初から病気の子どもの看護を学ぶのではありません。子どもがどんな存在で、どう発達していくかということを勉強し、子どもを理解するところから始めます。子どもを理解できると小児看護学への興味も高まると思います。ぜひ、一緒に小児看護学を勉強しましょう。

先生への質問

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宮城大学の建学の理念は、「ホスピタリティ精神とアメニティ感覚に溢れ、高度な専門性と実践的能力を身につけた、地域の発展をリードし、世界に貢献できる人材を育成するとともに、学術・文化の向上と豊かで活力のある地域社会の形成に寄与する」です。「看護学群」「事業構想学群」「食産業学群」の3つの学群で構成されており、私たちの生活を取り巻く、「医療」、「ビジネス」、「食」の3つの分野をそれぞれの学群で学ぶことができる公立大学です。「いま」を生きる知恵を磨く、最適な大学を目指して日々改革に取り組んでいます。