痛みをともなう医療処置を受ける子どもへの看護
恐怖や不安を和らげるケア
3~6歳の幼児期の子どもが、採血などの痛みをともなう医療処置を受けるときの恐怖心や不安を和らげるにはどうしたらよいでしょうか? この年齢の子どもは、認知機能が発達途上です。話し言葉は身につきつつありますが、複雑な感情は上手に表現できないので、ただただ拒否をするという状態になりかねません。そのときに、発達段階に合わせて説明をし、医療処置への不安の軽減や子どものがんばる気持ちを引き出す小児看護のケアをプレパレーションと言います。
イメージを助けるためのシミュレーション
幼児期の子どもは、初めてのことや見たことのないものをイメージするのが難しい発達段階です。医療処置の現場は家庭とは違う、いわばアウェイの環境であり、知らない人に囲まれ、何をされるかわからないという不安が高まります。こうした環境の中での採血を、言葉だけで説明して子どもの理解を得るのは困難です。そこで、子どもを採血の前に実際の処置の場所に案内し、手順を教えます。また、「こんなに小さな注射器だよ」と実際のものを見せることもあります。この場所で、これを使って、親もそばにいてくれる、という具体的なイメージを持ってもらうことで、がんばって処置を受ける方法を一緒に見つけていくのです。もちろん大人に説明するような難しい言葉では理解できません。聴診することを「もしもし」、吸入を「もくもく」というように、擬態語や擬音語を使いながら子どもにわかりやすい言葉で説明する必要があります。
「痛い」は「気持ちの痛み」も表す
子どもは怖いと思ったり、不安が高まったりすると痛みが増幅します。実際には痛みをともなわない処置であっても、子どもが不安だと思うことにはケアが必要です。子どもはさまざまな場面で「痛い」と言うことがありますが、それは身体的な痛みだけではなく、気持ちの痛みを感じているからです。それらすべての痛みを和らげるために、処置の現場では実際の子どもの様子を観察し、発達段階に合わせたプレパレーションを行う必要があるのです。
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宮城大学 看護学群 看護学類 准教授 三上 千佳子 先生
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