世界文化遺産級の「霜降り肉」を科学する
ブランド牛は黒毛和種のほんの一部
仙台牛や米沢牛、松阪牛などはブランド牛肉と呼ばれます。テレビ番組などで、柔らかそうな霜降りの肉を食べている映像をよく見かけます。これは、世界で唯一霜降りが多く入る黒毛和種という肉牛の肉で、日本の在来種です。さらに、ブランド牛に指定されているのは、黒毛和種の中でも厳しい基準をクリアしたごく一部なので、まさに和食材の高級霜降り牛肉は、世界文化遺産級と言っても過言ではないのです。
質の高い牛肉の生産は難しい
生物の遺伝は、肌の色などの「質的なもの」と、体重や身長、肉の柔らかさや霜降りの度合いなど「量的なもの」に分けられます。質的なものに関わる遺伝子は1つか2つですが、量的なものには数百の遺伝子が関わっていると考えられています。牛肉の場合、必要とされるのは経済効果が高い量的な遺伝ですが、関わる遺伝子が多いために、人がコントロールするのが非常に難しいのです。そこで、年月をかけて遺伝能力の高い牛同士の掛け合わせを繰り返し、現在の特質を持つ黒毛和種が誕生しました。例えば、宮城県には約10万頭の肉牛がいますが、種牛となれる候補の雄牛は、毎年400頭選抜され、それから厳しいテストを受けてたった4頭だけです。これらを父親に持つ子牛を含めて県内で生産される牛のうち、「仙台牛」と名乗れるのは生まれてくる牛の3割程度で、残りは普通の国産牛として市場に出されます。
効率よく人が望む肉牛をつくるには?
現在のところ、どの遺伝子が霜降り度や体の大きさなどに作用しているのか特定はできていませんが、染色体レベルでこの辺の領域が関わっているらしい、ということはわかってきました。ただ、その領域には数十から数百の遺伝子が並んでいるので、遺伝子を特定することが、これからの研究課題です。また、DNA塩基配列の1塩基の違いが遺伝的表現にどう影響するのかの解析が進んでいます。これらが明らかになると、人が望む美味しい世界遺産級の最高牛肉をもっと効率的につくることができるようになるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
宮城大学 食産業学群 食資源開発学類 教授 須田 義人 先生
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