「健康関連QOL」で患者の声を測り、医療を評価する

患者さんの主観も重要な医療の評価指標
整形外科には、膝や股関節を痛めてつえがないと歩けない患者さんや、リウマチで全身につらい症状のある患者さんが訪れます。事故で障害を負って介助が必要になったり、一生車いすを使うことになったりする人もいます。そのような人たちは「この患者さんは弱っていて生活が大変だろう」ととらえられがちですが、つらい側面を持ちながらも心はとても健康で、ポジティブに生活を送っている患者さんも多くいます。医療の質は、整形外科であれば痛みの改善率や手術後の関節の角度などで評価されることも多いのですが、実際の生活の様子など、患者さん自身に聞かなくてはわからないこともあります。
患者の言葉で医療の結果を測るには?
そこで、関節症や関節炎、脊髄損傷などの運動器疾患で体が動かせなくなった患者さんから、手術後の満足度や日常生活の困りごとなどを聞いたり、「健康関連QOL(生活の質)」の尺度を使って患者さんの主観を測る研究が行われています。健康関連QOLは患者さんが自分の健康度を直接報告するもので、病気によって健康がどの程度阻害されているかというネガティブな側面だけでなく、どの程度健康かというポジティブな側面も測定します。
治療に限りがあっても生活の改善はできる
医療者のなかでも、患者さんに直接関わる時間の長い看護師が健康関連QOLを評価することで、生活を改善するさまざまな提案につながっていく可能性があります。脊髄損傷など、根本的な治療には限りがある場合でも、痛みやしびれに対する対処や生活の工夫をすることで、患者さんの生活の質が上がります。これまでの患者さんから得られたデータを使って、さまざまなケアを提案することで、今大変な思いをしている患者さんの生活が改善します。生活の質は、援助や介入の仕方によって大きく変えていくことができるのです。
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