講義No.14778 看護学

「健康関連QOL」で患者の声を測り、医療を評価する

「健康関連QOL」で患者の声を測り、医療を評価する

患者さんの主観も重要な医療の評価指標

整形外科には、膝や股関節を痛めてつえがないと歩けない患者さんや、リウマチで全身につらい症状のある患者さんが訪れます。事故で障害を負って介助が必要になったり、一生車いすを使うことになったりする人もいます。そのような人たちは「この患者さんは弱っていて生活が大変だろう」ととらえられがちですが、つらい側面を持ちながらも心はとても健康で、ポジティブに生活を送っている患者さんも多くいます。医療の質は、整形外科であれば痛みの改善率や手術後の関節の角度などで評価されることも多いのですが、実際の生活の様子など、患者さん自身に聞かなくてはわからないこともあります。

患者の言葉で医療の結果を測るには?

そこで、関節症や関節炎、脊髄損傷などの運動器疾患で体が動かせなくなった患者さんから、手術後の満足度や日常生活の困りごとなどを聞いたり、「健康関連QOL(生活の質)」の尺度を使って患者さんの主観を測る研究が行われています。健康関連QOLは患者さんが自分の健康度を直接報告するもので、病気によって健康がどの程度阻害されているかというネガティブな側面だけでなく、どの程度健康かというポジティブな側面も測定します。

治療に限りがあっても生活の改善はできる

医療者のなかでも、患者さんに直接関わる時間の長い看護師が健康関連QOLを評価することで、生活を改善するさまざまな提案につながっていく可能性があります。脊髄損傷など、根本的な治療には限りがある場合でも、痛みやしびれに対する対処や生活の工夫をすることで、患者さんの生活の質が上がります。これまでの患者さんから得られたデータを使って、さまざまなケアを提案することで、今大変な思いをしている患者さんの生活が改善します。生活の質は、援助や介入の仕方によって大きく変えていくことができるのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

北里大学 健康科学部 看護学科 教授 小山 友里江 先生

北里大学健康科学部 看護学科 教授小山 友里江 先生

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看護学、運動器看護学、整形外科学

メッセージ

新しい一歩を踏み出すのは勇気のいることですが、ぜひいろいろなことにチャレンジしてみてください。「扉」というのは、たたくと意外と開けてもらえるし、きっと視野が大きく広がるような経験ができるはずです。自分自身を振り返ってみると、大学生のときからやっているボランティア活動で、車いすの子どもたちのサマーキャンプや、雪とふれあうスキーキャンプなどに参加した経験が、医療者になってからの幅を広げてくれました。そのときに一緒に活動していた仲間とは、今でもお互いに研究を支え合うような関係です。

北里大学に関心を持ったあなたは

北里大学では「なりたい、を超えていく」をコンセプトに、思い描いた将来像をも超えていけるような、社会に出てからも成長し続ける人の育成をめざしています。
また、「生命科学の総合大学」として、データを読み解き、未来の課題を見つける分野(未来工学部)、生命科学の基礎的研究を行う分野(理学部)、 動植物と環境に関する分野(獣医学部、海洋生命科学部)、人間の生命と健康に関する分野(薬学部、医学部、看護学部、医療衛生学部、健康科学部)の4つのフィールドから総合的にアプローチしています。