からだのメカニズムの解明から、新しい理学療法の可能性へ
求められる理学療法のエビデンス
理学療法士は病気やケガ、高齢、手術後に運動機能が低下した人などに対して、運動療法などを用いてリハビリを支援します。ただし、人によって痛みや炎症、筋力の低下具合、まひがある、生活習慣病があるなど状態が異なります。それに合わせて、どのくらいの頻度でどのような運動の強さにしたら良いか、どんなプログラムにするかを判断するのは難しいものです。
運動療法などを施して、その人のからだに効果が現れるまでに1カ月以上かかるといったことも多々あります。そうした機能回復のメカニズムを解明し、効果的な運動量や強度がわかれば、より適切なリハビリを提供できるようになるはずです。
回復のメカニズムを検証
例えば、骨折をしたらギプスで固定しますが、それをマウスで再現すると、固定した部分の筋肉や筋膜、皮膚の伸縮性が低下して硬くなります。人間も同じような状態になるため、ギプスを外したら少しでも筋肉や関節を動かした方がよいことは明らかです。
運動などで筋肉を刺激すると、筋肉からマイオカインというホルモンが分泌されます。これは、脳神経の活性化、体脂肪分解、骨形成の促進などの働きがあるとされています。筋肉が損傷すると、筋肉を再生するサテライト細胞が活動します。こうした物質や細胞、遺伝子の働きを調べ、どの程度の運動や電気刺激などの介入が適切かを検証していきます。
より適切な理学療法の発見にも
現在は、こうしたメカニズムが解明されておらず、回復する過程や現象の裏付けが少ない状態です。検証することで、より効果の高い新たな療法の発見につながる可能性もあります。
患者の職歴や運動歴によって筋肉のつき方の個人差は大きく、その対応は理学療法士の経験に頼っているのが現状です。エビデンスでリハビリの根拠を示せるようになれば、若い理学療法士でも判断できるようになり、運動機能の評価もより適正になるでしょう。誰もが納得できるリハビリを提供したり、受けたりできるようになるのです。
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先生情報 / 大学情報
帝京科学大学 医療科学部 理学療法学科 講師 相原 正博 先生
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