けがの状態をどう読み取る? 柔道整復師が重視する問診の役割
機械を使わずけがを把握する
柔道整復師は、治療において検査機器を使わず、患者さんの様子を観察してけがの状況を把握します。しかし痛みの感じ方は患者さんの年齢、体の柔軟性などによって個人差があるので、問診で正確な情報を聞き出す力が求められます。また、けがをしたときの状況から推測し、症状の重さや治療方法を判断する力も必要です。ただし、人はけがについてどうしてもごまかしてしまい、正直な説明をする患者さんは少ない傾向にあります。
柔道整復師とコミュニケーション能力
正確な情報を得るためには、患者さんの反応、表情、心理などが手がかりとなります。柔道整復師の基本は「手当て」なので、まずは手でさわってけがの状態を確かめます。このとき注目するのはさわった瞬間の反応です。本当に痛みを感じているときは、触れると反射的に体が動いたり、表情に出たりします。また、患者さんが痛みの原因だと思っている部分をさわり、ピンポイントでその箇所が痛むのであれば症状が重く、周辺箇所が痛む場合は症状が軽いとわかります。けがをしたときの状況を探るときは、衝撃がすべて1箇所に集中したのか、それとも複数の箇所に分散したのかを明らかにし、対処方法を考えます。柔道整復の教科書とは異なる事例も多いため、目の前の患者さんとしっかりコミュニケーションをとる力が求められます。
けがを予防するために
柔道整復師は、けがの予防や疲労の軽減方法についてアドバイスをする場面も多くあります。けがの予防法を考えるときの観点に「コンディショニング法」があります。コンディショニング法とは心身の状態を整えるための手段です。日常生活のすべては体や精神と結びついていると考えられています。そのため食事、睡眠、運動、趣味、感情など患者さんと接しているうちに得られるヒントからアドバイスをします。また、人はけがをしたあと「もう痛い思いをしたくない」と日ごろの行動に気を使う傾向にあります。これも次なるけがの予防となるコンディショニングのひとつです。
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先生情報 / 大学情報
帝京科学大学 医療科学部 柔道整復学科 准教授 佐野 秀明 先生
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