ジャンプするとき、いったん膝を曲げるのはなぜ?

ジャンプするとき、いったん膝を曲げるのはなぜ?

膝を叩けば足が上がる

人間の身体には、「SSC(ストレッチ・ショートニング・サイクル)=伸張反射」が備わっています。これは、筋肉がほかの力によって引き伸ばされると、センサーが働き、その筋肉を通常以上の力で収縮させる反応です。例えばつま先が地面につかない状態でイスに座り、膝下を軽く叩くと足が勝手にポンと上がります。これを「膝蓋腱(しつがいけん)反射」と言います。膝下を叩くことで太ももの筋肉が一瞬引き伸ばされ、SSCによってその筋肉が収縮したため、足が上がるのです。
SSCは不随意な反応で自分ではコントロールできませんが、より大きな力を出すとき、私たちは意識的あるいは無意識的にこのメカニズムを利用しています。それは「反動」です。

筋肉は伸ばすと縮む

反動は反対方向に作用する力、つまり、「押し返し」です。ジャンプをするとき、私たちは膝を曲げて少しかがみます。ふくらはぎと太ももの筋肉をいったん伸ばしてから縮めることで、より高く跳べるのです。
スポーツ選手は、“筋肉を伸ばして縮める”をひたすら繰り返すトレーニングで「SSC能力(筋力とスピード力)」を鍛えます。例えば、高いところから飛び降りて、すぐにジャンプするデプスジャンプなどがありますが、大切なのは素早く行うこと。どのようなトレーニングにも言える鉄則ですが、ゆっくり行うと筋肉は伸びきってしまい、縮まなくなるのです。ジャンプするときに完全にしゃがんでしまうと跳べないのと同じです。
反対に運動後のストレッチは、スポーツで緊張した筋肉を弛緩させることが目的ですから、筋肉を15~30秒かけてゆっくり伸ばし、SSCを抑えるのです。

すべてのベースは生理学

これらのことは、すべて「生理学」がベースになっています。生理学とは、人間の身体の基本的な仕組みや機能、すなわち“身体の正常”を学ぶ学問です。正常な状態を知っていれば、異常に気づきやすいということが言えます。スポーツトレーナーや鍼灸師など、スポーツにかかわる人にとっては特に欠かせない学問なのです。

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先生情報 / 大学情報

関西医療大学 保健医療学部 はり灸・スポーツトレーナー学科 講師 内田 靖之 先生

関西医療大学 保健医療学部 はり灸・スポーツトレーナー学科 講師 内田 靖之 先生

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鍼灸学、運動生理学

メッセージ

スポーツトレーナーは、「縁の下の力持ち」であり、自分一人では成立しない仕事です。トレーナーのかかわる場所には、選手はもちろん、コーチやマネージャー、観客もいるからです。
あなたは「守秘義務」という言葉を知っていますか? トレーナーは選手のコンディションや能力などの秘密を知る立場にあります。しかしそれは仕事ゆえに知りえる秘密ですので、他人に話してよいものではありません。この道をめざすなら、「人と接すること」「人の身体を触ること」「人の内面に深く関与すること」に対して、敏感であってください。

関西医療大学に関心を持ったあなたは

関西医療大学では「看護師」「保健師」「助産師」「理学療法士」「作業療法士」「臨床検査技師」「はり師・きゅう師」「柔道整復師」の国家試験全員合格をめざし、2学部6学科の学生が同じキャンパスで学んでいます。学科の枠を超えた交流を通して、異なる職種・業種への理解が深まり、チーム医療に携わる者としての素地が培われます。『現役プロがプロを育てる大学』関西医療大学は、学生一人ひとりに目を配り、全員を高いレベルのプロに育て、様々な医療現場から高評価を得る人材育成を実現しています。