地震予知や金属管検査にも 無限に広がる電波の可能性
電波とは
電場と磁場が互いに振動しながら伝わる物理現象を電磁波と言います。周波数(波長)によって赤外線や放射線などと呼ばれることもありますが、これらはすべて電磁波の一種です。おおむね、周波数3THz(1THzは1GHzの1000倍)以下の電磁波を「電波」と呼びます。日本国内では、テレビの地上デジタル放送が470~710MHz、スマートフォンはそれより高い周波数帯(4Gならば~3.5GHz、5Gならば~28GHz)といった具合に、電波は円滑な放送・通信に欠かせないものです。
電波で地震予知に挑む
電波にはほかにもさまざまな利用法があります。FMラジオの放送電波の強度をモニタリングすることで、地震発生直前に通常では見られない電波の異常変動を示すことがわかってきました。すべての地震で生じるわけではありませんが、統計的には有意な確率で地震発生との関係が認められています。理由についてはまだ不明ですが、地殻の変動や地表面の帯電状況などにより、地表近くに存在する(ラドン等の)ガス濃度が大きく変化し、大気の屈折率が平常時とは違う状態となることで電波の異常変動が起きているというのが有力な仮説の一つです。地震自体は防げなくても、高い精度でその発生を予知することができれば、被害抑制に貢献できます。
金属製配管の検査にも貢献
電波は空を飛ぶだけではありません。工場や発電所では多くの金属管が設置され、使用の長期化にともない劣化が進みます。しかし管内に欠陥や穴が生じていないか、異物が落ちていないかを検査するのは容易ではありません。こんなケースに役立てようと、配管の片方から電波を送り、もう片方でそれを受け取った上で、両者の波形の違いから、欠陥や異物の有無を調べるという従来にない新たな測定方法の開発も進行中です。場所により径が大きく変わる管では難しいものの、曲がっている管、地中に置かれた管でも検知が可能です。このように電波の持つ特性を生かしつつ、産業活動や人々の社会生活に貢献すべく模索が続けられています。
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群馬大学 理工学部 電子・機械類(電子情報通信プログラム) 教授 本島 邦行 先生
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