コロナ禍、罰則による営業規制の是非を考える
コロナ特措法の改正を契機に
新型コロナウイルス対策を強化する目的で、2021年2月にいわゆるコロナ特措法と感染症法が改正されました。当初案では罰金(刑罰)を科す予定が過料(行政罰)に軽減されたことなどで、話題になりました。とはいえ、緊急事態宣言下の営業時間短縮の命令などに違反すれば、金銭制裁が加えられることに違いはありません。もちろん、コロナ禍は人命に関わるのだから仕方ないという人もいるでしょう。他方で、疲弊した飲食業者に金銭制裁で追い打ちをかけるのは、やりすぎだと考える人もいるでしょう。一体どう考えるべきでしょうか。
処罰規定の根拠を問う:クラブNOON事件
参考になるのは、大阪のダンスクラブに関する裁判です。ダンスクラブは「風営法」によって営業時間なども規制され、違反には懲役も科せる規定になっていたのですが、当局が黙認する形で、違法営業が常態化していたのです。ところが2010年末から突然、取締りが強化されました。こうした中、クラブNOONは、風営法違反の罪で起訴された裁判で徹底して争い、無罪を勝ち取ったのです。判決によれば、風営法は性風俗や賭博の規制を目的とする法律であり、ダンスクラブを規制対象とした理由も、昔は性風俗を乱す業態だったからであって、男女がバラバラに踊る現在のダンスの規制までは、その目的からは導けないというのです。この判決の後、風営法は改正され、ダンスクラブは規制対象から外されました。
合理的で公平・公正な解決に向けて
法律を作って規制を加え、罰則を科すには、明確な根拠が必要です。この判決から学んでほしいのは、法律に罰則規定があっても、その規定の言葉通りに裁判をするのではなく、法律制定時の規制目的と現代の役割とを比較するといった方法により、合理的な解決を導くことが必要な場面があるという点です。では、コロナ特措法の罰則規定はどうでしょう。自分ならどう判断するか考えてみてください。それこそが法学という学問への第一歩なのです。
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大阪学院大学 法学部 法学科 准教授 戸浦 雄史 先生
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