介護度が高い人も、その人らしく生きる道を―作業療法士の役割

生き生きと過ごすための支援
作業療法士は、体や精神に障害のある人が日常生活の動作ができるように支援する専門職です。その一番の目的は、障害のある人が自分らしく生き生きと過ごせるようにすることです。しかし、病気などの後遺症で介護度が高い状態になった人や、認知症の高齢者には、必ずしも思うような支援ができるわけではありません。そんな人たちには、日常動作のリハビリだけでなく、患者の思いや願いをかなえる支援を重視しています。そのために、その人の生き方や生活の様子、好きなこと、興味関心を知ることも必要です。
多職種連携で実現性は高まる
とはいえ、作業療法士だけではできることは限られます。介護施設に入所している人には、介護職員との連携が不可欠です。ケアマネージャーや看護師、栄養士などと連携してケアプランを考えることもあります。作業療法士の目的を共有することで、異なる職種の人たちが行う日々の介護やケアに変化が生まれます。在宅療養をしている人にも同様に、家族に伝えることもあります。
また、患者は作業療法士と会話することで、「自分で買い物に行きたい」、「妻の役に立ちたい」といった、自分の思いに気づくこともあります。すると、驚くほど動けるようになって思いを実現できるケースも多々あるのです。技術だけでなく、人との関係を築ける作業療法士を育てる教育の重要性が高まっています。
地域に広がる活躍フィールド
近年、国が政策を打ち出して、高齢者に限らず、若い人も、障害がある人もそうでない人も、すべての人に安心して地域で生活してもらうための動きが活発になっています。介護やケアが必要な人も、自身の考えややりたいこと、好きなことを尊重することが重要視されています。
作業療法士の活動フィールドは今、医療や福祉だけでなく、地域や行政にまで広がっています。自分らしく生きるための支援が、いつでもどこでもできる体制がつくられようとしています。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
