旅館経営が危機?! 観光業界で何が起きている?
観光地の価値を創造する
日本は世界でも有数の観光資源国です。例えば、温泉地をとってみても、群馬の草津温泉や伊香保温泉、新潟の越後湯沢温泉や月岡温泉、熊本の黒川温泉など数えきれません。しかし、かつてのにぎわいを失っている観光地も多く、経営の危機に直面している旅館も少なくありません。そのような中、観光庁は、観光地域の魅力を高めるため、官民が連携して観光地域づくりを推進する法人(DMO)の設立を推進しています。さらに、旅館の経営者が会社やNPO(非営利団体)などを立ち上げ、観光地の魅力を作り出す動きも始まっています。
旅館経営者が集まって空き店舗を再生
月岡温泉では、旅館の若手経営者が集まって合同会社を設立し、空き店舗を再生する事業を始めました。1年に1店舗のペースで出店しており、観光客の増加などの定量的効果が現れつつあります。このような活動を維持するのに必要なのが、CSV(共有価値の創造)の視点です。観光地の価値を自ら創造することで観光客を増やし、本業である旅館の利用者を増やします。その利益をさらに地域の価値創造のために投資すれば、好循環を生み出せるでしょう。CSVの概念は、ハーバード大学のマイケル・ポーター教授が提唱して以来、主にグローバル企業などが導入してきましたが、旅館のようなローカル企業においても効果が期待されます。
経営の問題解決に向けて
観光地域づくりの推進や、地域の価値創造の動きの一方で、旅館経営者は風通しのよい職場や教育制度を整えるなど、従業員の働きやすさと働きがいを向上させる取り組みも行っています。観光業は新型コロナウイルスの感染拡大により厳しい局面を迎えました。しかし、ビジネスチャンスをつかむために、将来を見据えて、覚悟をもって地道な努力を続けている経営者はたくさんいます。経営学では、このような経営者や地域の取り組みの取材・調査を通して、経営上の課題解決に役立つ考え方を学問的な視点から明らかにしていくことができるのです。
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先生情報 / 大学情報
群馬大学 情報学部 情報学科 准教授 大野 富彦 先生
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