「小さな大国」キューバの独自政策とは
ナショナリズムと一体化した社会主義体制
キューバ共和国は、ラテンアメリカ唯一の社会主義国です。1991年に社会主義大国・ソビエト連邦(ソ連)が崩壊し、ソ連に社会主義体制を押し付けられていた東欧諸国は次々に民主化しましたが、1959年にフィデル・カストロを中心とした革命により、自ら社会主義体制を選び取ったキューバは、現在も社会主義を貫いています。社会主義体制下で医療や教育を無償化し、その水準が劇的に向上したことは「革命の成果」として国民にプライドを与えました。キューバの特徴はナショナリズムと社会主義が一体化している点にあるのです。
経済的混乱に陥るも独自路線で危機を克服
人口約1,100万人の小国であるキューバは、ソ連との関係で経済を維持していたので、当然、ソ連崩壊で混乱しましたが、自由主義先進諸国からの「条件付き援助」を拒否し、アメリカにも反旗を翻し、経済制裁も受けましたが、アメリカ中心となった世界の政治経済の流れに乗ることなく、ラテンアメリカ諸国や中国との良好な経済関係を維持して経済危機を乗り越えてきました。アフリカへの積極的な支援などを通じて国際世論を味方につけることにも成功しています。
独自の政策で政治的・経済的独立をめざす
過去には、ソ連に高く買い取ってもらえる砂糖が基幹産業でしたが、今は観光業やサービス業、「人材の輸出」に力を入れ、特に医療・教育・スポーツ・音楽分野の関係者が年間35,000人以上ラテンアメリカ諸国などで働き外貨を獲得しています。また外国人を自国の病院に滞在させ、高度医療や観光を提供する「医療ツーリズム」も盛んです。このような国際政治学で「ソフトパワー」と呼ばれる力を活用してキューバは独自の路線を歩んでいます。実際には、キューバの若者の多くは就職難で絶望し、アメリカ移住を夢見ているという現実もあり、現在のラウル・カストロ(フィデルの後継者)政権が安泰とは言えませんが、国際政治にもインパクトを与え続けてきたこの「小さな大国」の動向は、今後も注目されるでしょう。
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