進化が止まらない! ものづくりを支える検査の世界
ものづくりの信頼性を担保する検査技術
ものづくりには、常に検査が必要です。第2次世界大戦でアメリカは、当時普及し始めた溶接技術で輸送船を大量に作りました。しかし溶接の不備で浸水事故が絶えず発生し、そこから検査技術が発達しました。戦後、溶接ロボットが開発されたり、輸送機器の材料に金属と炭素繊維を接合したりするなど、新しい製造技術が登場しました。その製品の強度や耐久性、安全性といった信頼性を担保するために、検査技術も同時に進歩してきました。逆に言えば、適正な検査を施さない限り、ものづくりはできないのです。
超音波を利用して製品の異常を検査
物体を分解・破壊せずに検査・評価する技術を「非破壊検査」と言います。非破壊検査には、主に超音波が使われます。なぜなら、超音波には固体の中を伝わりやすく、まっすぐ進んではね返るという特性があるからです。この特性を利用して照射した超音波のはね返り具合で、亀裂や破断の有無などの異常を検査できます。これを「超音波パルス反射法」と言います。また近年では、レーザーから発生する超音波を利用する場合もあります。レーザー照射は遠い場所からでも可能なので、プラントや橋などの経年劣化の検査が容易になります。
3Dプリンタでつくる金属部品にも検査が欠かせない
近年、急速に発達しているのが3Dプリンタを使った金属部品の製造です。しかし、粉状の金属を溶かして積み上げていく3Dプリンタの製法は、内部に欠陥ができやすく、現状では強度と信頼性の必要な製品にはまだ向いていません。そこで、造形中に超音波検査を行い欠陥のない製品を作るなどの改良が進められています。この技術が確立されれば、部品を溶接や接着剤で接合する必要がなくなり、部品の信頼性が向上します。また、データさえあれば、世界中どこでも3Dプリンタで同じ製品を作ることが可能になります。月面に3Dプリンタを持っていって、東京スカイツリーを建てることも夢ではないのです。
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大阪大学 工学部 応用理工学科 機械工学科目 教授 林 高弘 先生
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