あらゆる分野で活用される、流体の「動き」を可視化する技術
目に見えないものを、粒子とレーザーで可視化
湯船に手を入れ、ちょうど良い湯加減だったので湯船に浸かったところ、足もとの湯はぬるかった、という体験はありませんか。それは、水の「熱流動」という現象によるものです。液体や気体などの流体に熱エネルギーが加わったり、高温の流体と低温の流体が混ざり合ったりすると、温度差による浮力や熱移動によって対流が発生し、温度分布にバラつきが生じるのです。そこで、レーザー光などで反射する「トレーサ粒子」を流体に混ぜ、その動きをハイスピードカメラで撮影して可視化する「粒子画像流速測定法(PIV)」で、熱流動の速度や温度分布の様子を計測する研究が進められています。
幅広い分野で活用されるPIVの計測技術
火力発電所のボイラーや産業用エンジンなど、常に大きな温度差が存在する設備では、熱流動が設備の劣化や損傷の原因になります。ここでもPIVを用いた計測が活躍します。観察する流体によってトレーサ粒子を変えたり、粒子の動きが明確に見えるよう、撮影画像のピクセル数を変更したりフィルタをかけたりしながら、より広い分野に応用できる可視化技術が研究されています。
省エネにも寄与する研究
流体の動きは、熱によるものばかりではありません。例えば、向かい風が吹く中で自転車をこいでいると、見えない力で押し返されるような感覚があるでしょう。その「見えない力」は、空気が動いている物体に与える力学的な影響です。
水車やスクリュー、プロペラなど水中や空中で運動する物体に、流体による力学的な影響、つまり「抵抗」が加わらないようにした方が、エネルギー効率が大きくなります。そうした分野の研究にもPIVは応用されており、水車の翼の枚数を変えたり形状を変えたりすることで、省エネに結びついた事例が多数あります。身近なところでは、マスク着用時の水蒸気の動きを可視化し、メガネが曇りにくいマスク形状を検討する研究などにもPIVが活用されています。
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先生情報 / 大学情報
茨城大学 工学部 機械システム工学科 准教授 李 艶栄 先生
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