講義No.10638 食物・栄養学

食品の「機能性成分」の吸収メカニズムを解明せよ!

食品の「機能性成分」の吸収メカニズムを解明せよ!

機能性成分を効果的に取り入れたい

食品には、栄養素だけではなく「機能性成分」が含まれています。機能性成分とはアンチエイジング、がんや高血圧の予防、免疫力の向上などに効果のある成分のことです。例えば、ポリフェノールやカロテノイドなどがあります。しかし、食品にこれらの機能性成分がどれだけたくさん含まれていても、体内に吸収されなければ、効果を発揮できません。そこで、機能性成分が吸収されやすい食品加工の方法、また、機能性成分が体内で吸収されるメカニズムの研究が進められています。

ポリフェノールの分解を防げ!

「ポリフェノール」を多く含む食品の代表選手がオリーブです。アンチエイジングにつながる抗酸化作用や特定の物質による抗アレルギー効果があり、健康によいと注目を集めています。通常、オリーブはそのままでは渋みが強くて食べられないため、水酸化ナトリウム液で渋抜きの加工がされます。しかし、この過程で90%のポリフェノールが分解されてしまうのです。
そこで、その代用として塩化ナトリウムによる加工(塩漬け)が研究されています。ポリフェノールの分解を抑えつつ、オリーブが持つ乳酸菌や酵母菌も作用させられるため、オリーブの新たな機能が発見される可能性もあります。

カロテノイドの吸収率はなぜ低いのか

抗がんや抗肥満作用があり、さまざまな病気の予防効果があるのが「カロテノイド」です。にんじんやみかん、鮭などの動植物に含まれるオレンジ色や赤色の色素のことです。600種類あるといわれていますが、実際に人の血液中から検出されているのは10種類ほどで、摂取しても全く吸収されないものもあるのです。しかも、血液中に入ったものでも、体内への吸収率は約30%以下です。カロテノイドの作用を効率的に取り入れるため、何が吸収を阻害しているのか、解明が急がれます。
これら食品の機能性成分の吸収メカニズムがわかれば、カロテノイドだけでなく、医薬品の吸収を高める技術にも応用ができると期待されています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

香川大学 農学部 応用生物科学科 教授 YONEKURA LINA 先生

香川大学 農学部 応用生物科学科 教授 YONEKURA LINA 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

食品科学

先生が目指すSDGs

メッセージ

食品には、栄養素だけではなく、「抗酸化」や「抗アレルギー」など健康を向上させるための素晴らしい機能性成分がたくさん含まれています。実験では、腸の細胞を培養したり、定量分析したり、精密機器で物質の性質を調べたり、一つひとつのサンプルをもとに、機能性成分がどのように体内に吸収されていくのかを確かめます。私はこれらの実験自体がとても楽しく、やりがいを感じています。化学、生物などさまざまな分野との関連性も高く、幅広く興味関心をもつことができるのもこの研究の魅力です。あなたもぜひ一緒に勉強してみませんか。

先生への質問

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