夜空の星は、光の粒を見ている
遠い星はまったく見えない?
夜空に星が見えているのは、ごく当たり前の風景ですが、実は不思議なことなのです。夜空に見える星は、太陽のような恒星がほとんどです。いちばん近いのはもちろん太陽ですが、2番目に近い恒星は、ケンタウルス座の星のひとつで、4.3光年の距離があります。光は1秒間で地球を7.5周する速さですが、その速度で4.3年かかる遠さです。もともとの星は明るく輝いていますが、距離が離れているので、エネルギーはだんだん弱まってきます。地球にいる私たちの目の面積に入ってくるエネルギーはほんのわずかです。人間の目はどんな小さな光でも感じるわけではなくて、ある程度以上の光量が必要です。
計算によると、ケンタウルスの光を感じ取るためには、約1/10秒間シャッターを開け続けて得られる光量が必要です。しかし、人間の目はもっと短い1/30秒ごとにデータを脳に送る構造になっています。テレビや映画などの動画は、1秒間に24~30枚の静止画が映されているので動いているように見えているのです。見えるまでに必要な1/10秒間を待たず脳に信号を送ってしまうのです。つまり、エネルギーが弱すぎて人間の目では光を感じず、ケンタウルスはもちろんのこと、もっと遠くの星はまったく見えないということになってしまいます。
光の粒がそのまま飛んでくる
しかし、夜空に星は見えています。これは、光には波としての性質と粒としての性質の両方があるためです。光の波としてのエネルギーは距離が遠くなるとどんどん弱まっていきますが、粒子は光の最小単位でそのまま飛んできます。ひとつひとつの粒子は光子(フォトン)と呼ばれ、これ以上割り切れない最小の単位ですから、距離が離れていっても弱まることはありません。人間の目はフォトンが2個ぐらい入ってくると光として感じることができるので、遠い星が見えているのです。光の粒子性というと大げさですが、こんな身近な場面でもそれを体験しているのです。
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