講義No.10647 機械工学

「常識」を超えて進化する、大型トラックの未来

「常識」を超えて進化する、大型トラックの未来

なぜトラックは「四角形」なの?

大型トラックは陸運を支える輸送手段のひとつとして走り回っています。そのトラックは、どのメーカーのものも、ほぼ同じ「四角形」をしています。空気抵抗が大きく、燃費がよくなさそうだと思いませんか?
トラックは、法律で幅・高さ・長さなどが定められているため、その中で最大限に荷物を積載できるようにすると、形はおのずと四角くなります。例えば新幹線のような流線型にすると、無駄が生じてしまうのです。ただし、空気抵抗は車速の2乗に比例し、高速になるほど大きくなります。つまり高速道路を利用することが多い大型トラックにとって、四角い形状の空気抵抗が燃費に与える影響は非常に大きいのです。

電気走行はまだ難しい?

近年、燃費や環境負荷の観点から、電気自動車が大きな話題になっています。しかし、大型トラックについては、現在の技術では14トントラックをガソリン車並みに動かすのに必要なバッテリーが10トンにもなり、全く現実的ではありません。政府は地球温暖化対策の一環として、2030年にはすべての新車を「電動車」へ移行する方針を打ち出しています。しかし重量の大きな車を電気だけで動かすには問題点が多く、ガソリンエンジンか軽油で動くディーゼルエンジンをハイブリッド化し、温室効果ガスの排出をゼロに近づけ環境性能を高める改良をしていく方向へ進むでしょう。

環境に優しい最適解を求めよう

これからの大型トラックは、「より重いものを高速に」に加え、「より低燃費で環境に優しく」が重視されます。トラックは新幹線と違い、悪路を走ったり直角に曲がったりしますから、単純に流線型にすればよいわけではありません。3次元シミュレーションや風洞実験で空力性能を磨き、同時に横揺れや傾きを防ぐ走行安定性を高め、さらに運転手の視認性もよいモデルを研究する必要があります。そのベストな形状が見つかったとき、トラックの幅や高さなどについての法律も改正されて日本の陸運が変わっていくと考えられます。

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先生情報 / 大学情報

大阪産業大学 工学部 機械工学科 教授 川野 大輔 先生

大阪産業大学 工学部 機械工学科 教授 川野 大輔 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

機械工学、流体工学、熱工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

研究で大事なことは、関連する専門知識を得る前に、その研究に興味を持つことです。興味を持つことは、今からでも早すぎることはありません。学校での活動や友達と遊んでいる間にも、将来の夢や興味のヒントが隠されているはずです。今のうちに見つけておきましょう。
大学は、皆さんの夢や興味をさらに具体化させる場と考えています。私の研究室では、地球温暖化問題などを解決するための、エネルギー変換技術全般を研究対象としており、皆さんの夢や興味に合った研究テーマが見つかります。ぜひ一緒に、夢のある楽しい研究をしませんか?

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

大阪産業大学に関心を持ったあなたは

大阪産業大学機械工学科は、なんで機械工学科に入学したの?と学生に尋ねると、「モノづくりに興味があったから!」と多くの学生が答えてくれる、楽しそうな・面白そうな雰囲気のあるところです。
機械工学の基礎である「力学」の教育に重点を置く一方で、今後成長の見込める医療・福祉・健康といったヘルスケア分野や、ロボット工学、宇宙工学といった先進的な領域も取り入れた授業も用意されています。創造的で発想力のある感性豊かなエンジニアの育成を教員一丸となって取り組んでいます。