工学の技術を医療に生かす ~超小型機械・マイクロマシンの研究~

工学の技術を医療に生かす ~超小型機械・マイクロマシンの研究~

精巧な加工技術をモノづくりに生かす

「マイクロマシン」と呼ばれる超小型機械が、身近なシステムの中で活躍するようになりました。例えば、スマートフォンやゲーム機のコントローラーの中で動きを検知するセンサーなどです。マイクロマシンの基礎となる技術は、細かな電子回路を作る半導体の加工技術(マイクロ・ナノ加工技術)です。マイクロマシンは医療分野でも生かされています。

創薬や再生医療などに役立つ装置

「細胞解析デバイス」は、微小な電極や流路などを数センチのシリコン基板上に構築し、細胞培養や計測を行う装置です。例えば、神経疾患の患者さんの細胞からiPS細胞を作り、培養して神経細胞に成長させます。すると、その神経細胞も、神経疾患の性質を持ちます。それに薬の候補となる物質を投与し、細胞からの電気信号を計測することで薬の効果や副作用を調べるのです。細胞培養から薬の投与、効果測定までが、ひとつのシステムで実施可能になります。細胞は体の中にある時と体の外に出した時では状態が変わってしまうので、体内と同じような環境をどのようにして装置内に構築するかが課題となります。このような装置は、創薬だけでなく、再生医療のために細胞の成長を制御する技術や、化粧品の安全テストなどにも使えます。

血液検査が簡単にできる装置

もうひとつは、血液検査が簡単にできる装置です。これは、幅1ミリ以下の細い流路を作り、その中に血液を流して、血球と血漿(けっしょう)を分離します。そして、血漿中のタンパク質を計測するのです。小さな病院では、血液を臨床検査会社や大病院に送らなければ、検査結果がわかりません。しかし、この装置を使えば、小さな病院でもすぐに結果がわかるようになります。しかも、採血は微量で済むので、患者さんの負担が軽くなります。この装置を使った検査キットが安価で手に入るようになれば、在宅医療や過疎地域の医療に多いに役立つでしょう。
このように、最先端の工学技術で作るマイクロマシンは、医療分野に貢献できる大きな可能性を秘めているのです。

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先生情報 / 大学情報

九州工業大学 大学院生命体工学研究科 生体機能応用工学専攻 教授 安田 隆 先生

九州工業大学 大学院生命体工学研究科 生体機能応用工学専攻 教授 安田 隆 先生

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機械工学、電気電子工学、マイクロナノ工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

「新しい技術を生み出す」ということは、まだ誰もやったことがないことにチャレンジするということです。前人未到のゴールに到達するためには、自分自身で工夫するしかありません。このとき大切なのは、自らの意志で知識や技術を学ぶことです。誰も正解を教えてくれないので、自主的に学び、答えを探さなければなりません。
大学は、勉強の仕方を身につける場所と言えます。時には思い切り遊ぶことも必要ですが、興味のあることはどんどん調べて、自分で勉強する習慣を身につけてください。

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九州工業大学に関心を持ったあなたは

九州工業大学大学院生命体工学研究科は、北九州市若松区の北九州学術研究都市内に2001年に開学しました。生命体工学という新しい分野を創成し、生物の持つ、省資源、省エネルギー、環境調和、人間との親和性等の優れた構造や機能を解明し、それを工学的に実現し応用することのできる技術者や研究者の育成を目標としています。また、本研究科では様々なプロジェクトに取り組んでおり、ロボットによるサッカー競技会への参加やトマト収穫ロボット競技会の企画等を通じて、「自然とロボットのあり方」について研究を進めています。