水をきれいにする技術で途上国を支援
水をきれいにする方法は2種類
人類に必要不可欠な資源といえば、まず思い浮かぶのは「水」でしょう。人類のいるところ必ず、きれいな水が必要です。水質浄化には、「水道水などの飲み水を安全な水にするための浄化」と、「利用した下水や工場などの排水を環境へ安全に放出するための浄化」があります。さらに、技術的観点から分けると大きく2つあり、水と水以外とを分ける「分離」技術と、水の中の不要なものを「分解」する技術です。
途上国の地下水に含まれるひ素
水に恵まれた日本では、水道水が飲用できる一方、工場排水などは厳しく規制されています。しかし外国に目を向けると、例えばベトナムやネパールでは、飲料水としている地下水に高濃度のひ素が自然に含まれているという問題があります。無色無臭で味もないにもかかわらず、飲み続けると健康を害する危険な物質です。ひ素を除去するには、例えば細菌の働きを借りてひ素の価数を変え、沈殿しやすくするといった方法があります。この細菌は特別な細菌ではなく、どこの地下水に生息する一般的な細菌で、自然の力を利用した技術の1つです。
ふっ素の除去に効果、新しい技術
また、有害物質といえばふっ素も同様です。歯磨き粉やフライパンのコーティングなどに使われるおなじみの物質ですが、多く摂取すると健康に良くありません。本来ふっ素は海水中にも含まれており、途上国の地下水に含まれるふっ素もまた、自然由来のものです。ふっ素は骨に吸着されやすいので、動物の骨を炭化させて吸着材にする研究も日本では行われています。骨の主成分であるリン酸アパタイトの成分がふっ素と吸着しやすいのです。飲み水を確保するために、食品廃棄物となる動物の骨を炭にして効果的に有害物質を除去することは、廃棄物の再利用にもなり、途上国にとっても実用化しやすい技術といえるでしょう。低コストで環境を浄化する方法の開発は、途上国への支援・海外協力ともなり得るのです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
大阪産業大学 デザイン工学部 環境理工学科 教授 濱崎 竜英 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
水環境工学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?