講義No.12090 環境学 土木・環境工学 理工系その他

水をきれいにする技術で途上国を支援

水をきれいにする技術で途上国を支援

水をきれいにする方法は2種類

人類に必要不可欠な資源といえば、まず思い浮かぶのは「水」でしょう。人類のいるところ必ず、きれいな水が必要です。水質浄化には、「水道水などの飲み水を安全な水にするための浄化」と、「利用した下水や工場などの排水を環境へ安全に放出するための浄化」があります。さらに、技術的観点から分けると大きく2つあり、水と水以外とを分ける「分離」技術と、水の中の不要なものを「分解」する技術です。

途上国の地下水に含まれるひ素

水に恵まれた日本では、水道水が飲用できる一方、工場排水などは厳しく規制されています。しかし外国に目を向けると、例えばベトナムやネパールでは、飲料水としている地下水に高濃度のひ素が自然に含まれているという問題があります。無色無臭で味もないにもかかわらず、飲み続けると健康を害する危険な物質です。ひ素を除去するには、例えば細菌の働きを借りてひ素の価数を変え、沈殿しやすくするといった方法があります。この細菌は特別な細菌ではなく、どこの地下水に生息する一般的な細菌で、自然の力を利用した技術の1つです。

ふっ素の除去に効果、新しい技術

また、有害物質といえばふっ素も同様です。歯磨き粉やフライパンのコーティングなどに使われるおなじみの物質ですが、多く摂取すると健康に良くありません。本来ふっ素は海水中にも含まれており、途上国の地下水に含まれるふっ素もまた、自然由来のものです。ふっ素は骨に吸着されやすいので、動物の骨を炭化させて吸着材にする研究も日本では行われています。骨の主成分であるリン酸アパタイトの成分がふっ素と吸着しやすいのです。飲み水を確保するために、食品廃棄物となる動物の骨を炭にして効果的に有害物質を除去することは、廃棄物の再利用にもなり、途上国にとっても実用化しやすい技術といえるでしょう。低コストで環境を浄化する方法の開発は、途上国への支援・海外協力ともなり得るのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

大阪産業大学 デザイン工学部 環境理工学科 教授 濱崎 竜英 先生

大阪産業大学 デザイン工学部 環境理工学科 教授 濱崎 竜英 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

水環境工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

環境分野は、テレビや携帯電話を作るような華やかな仕事ではないかもしれません。しかし私たちの生活を守る重要な仕事で、そのひとつが安全な水を作り、きれいな排水を川や海に流す技術です。このような仕事はこれからも永遠に、私たちが生きていく場所では必ず存在します。あなたも将来環境に携わる仕事に就いてみませんか。
関心があれば、大阪産業大学で環境工学を学びましょう。高校生のあなたにとって、疑問に思ったことを調べることが、将来への一歩です。身近なことから探究心を満足させることを、始めてみませんか。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

大阪産業大学に関心を持ったあなたは

大阪産業大学 環境理工学科は、自然やまちの中でのフィールド活動や、実験が好きな学生がたくさん集まる元気な学科です。
この学科では、環境と社会をデザインするプロフェッショナルを育成しています。理系と文系の両方の学生を受け入れ、環境技術、地域生態系、環境緑化、環境計画の4コースでの実践的なプログラムをとおして、水・大気・生物・都市などの環境を調べ、環境保全や環境創造につなげる技術を磨いていきます。公務員や公害防止管理者、造園施工管理技士などの試験対策、中学・高校の理科教員の養成にも力を入れています。